トランプとうり二つの反中派が米経済を担う
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<トランプ政権で貿易政策を率いるピーター・ナバロは、危険なほど単純な対中国強硬策を唱える人物>(写真:ナバロの著作『中国による死』はドキュメンタリー映画にも)
トランプ次期米大統領は、10年間で2500万人の雇用を創出するとぶち上げて当選したが、その壮大な計画の旗振り役が決定した。カリフォルニア大学アーバイン校教授でトランプ陣営の政策アドバイザーを務めたピーター・ナバロが、新設される「国家通商会議」のトップに指名されたのだ。
政権移行チームによれば、ナバロは「貿易赤字を縮小し、成長を拡大し、雇用の国外流出を阻止する政策を進める」。つまり今後は、ナバロがアメリカ経済のカギを握ることになる。実はそれこそが、懸念材料だ。
ナバロの最近の記事や著作やインタビューを見れば、彼がトランプと同じ戦略の持ち主であることが分かる。非現実的な経済構想に基づく大胆な約束を好み、詳細な説明は放棄。トランプ同様、ナバロは米経済の苦境の原因を超単純化して考えている。中国がアメリカの雇用を奪っているのであり、中国に対処すれば雇用を取り戻せる、と。
ナバロの著作『中国による死』は、彼の経済観を表している。「自由貿易というトロイの木馬にまたがった『捕食者』中国が米製造業の数百万の雇用を奪ってきた」と、彼は書く。
中国の為替操作も過剰に敵視。近年進むオートメーション化やグローバリゼーションなどのより大きな要素は無視して、アメリカ製造業衰退の原因を中国という一点に単純化している。
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こうした主張のいくつかは、単なる事実誤認だ。彼は汚染された輸入中国食品を食べるのは「自殺行為だ」と書く。「中国の労働者の間では手足切断事故と癌が蔓延している」とも。
文章をこき下ろしたくはないが、ナバロはもっとまともに書けたはずだ。各章のタイトルには、タブロイド紙から寄せ集めて交ぜ合わせたようなとっぴな言葉が並ぶ。「いかにして中国政府の『掃除機』がアンクル・サムの首つり縄を吸い込んでいるか」「見て、デススターがシカゴを狙っている」といった具合だ。筆者は中国関連の書籍をたくさん読んでいるが、内容といい書き方といい、ここまでひどいものは初めてだ。