最新記事

メキシコ

ペニャニエトが「国境の壁」建設を阻止するための7つの切り札

2017年1月26日(木)19時43分
ロビー・グレイマー、エミリー・タムキン

アメリカとメキシコの国境に新しく建設された壁 Jose Luis Gonzalez-REUTERS

<トランプに睨まれたら、どんなに関係の深い友好国も安心できない。それが、メキシコの経験から学ぶべき教訓だ>

 メキシコのエンリケ・ペニャニエト大統領は、今月31日にワシントンを訪問してドナルド・トランプ大統領と会談する予定だったが、。トランプが25日、国境に壁を建設する大統領令に一方的に署名したため、メキシコ側は訪米中止も検討しているという。

 ただ壁を作るだけではない。その費用はメキシコに払わせるというのがトランプの公約で、今も変わっていない。メキシコ側は「国家の尊厳と主権にかけて」払わないと言っているが、ひとまず米政府が負担して後でメキシコに請求しようという既成事実化も進む。

【参考記事】トランプの「嘘」まとめ(就任式、対日要求ほか)

 遅かれ早かれ、トランプと対決しなければならないペニャニエトには、7つの切り札がある。

アメリカの雇用に貢献

 トランプが大好きなテーマだ。アメリカの約600万人の雇用は、メキシコへの輸出に依存する。なかでも貿易比率が高いカリフォルニア州とテキサス州は、メキシコ関連の雇用が飛びぬけて多い。事実、BRICsの4カ国を合わせたよりもメキシコの方がアメリカ製品を多く輸入している。

移民は経済成長にプラスの効果

 メキシコからの移民がどれほどアメリカのGDP(国内総生産)を押し上げるのか、正確な数字で示すのは難しい。ただ、米シンクタンクの移民研究センターが推計した1.93%(2014年)にしても、米メディアのビジネス・インサイダーが算出した4%(2012年)にしても、その数字がゼロより大きいのは明らかだ。昨年9月に米学術機関の全米アカデミーズが発表した報告書は、移民はアメリカの雇用を奪わないと結論付けた。

【参考記事】トランプのメキシコ系判事差別で共和党ドン引き

メキシコは農産物の輸出先

 メキシコは、アメリカの農産物にとって世界で3番目に大きい輸出市場だ。2014年にアメリカは全農産物の13%をメキシコに輸出し、その売り上げは195億ドルに上る。

貿易全体でも重要な相手国

 在メキシコ米国大使館によると、メキシコはアメリカにとって第3の貿易相手国だ。1日当たりの2国間の貿易額は15億ドルに上る。

アボカド

 アメリカで絶大な人気を誇る果物。米シンクタンク大西洋評議会によると、アメリカで消費されるアボカドの80%は、世界最大の産地メキシコから輸入されている。それがトランプの大統領就任後は、アボカドを満載したトラックが国境沿いで足止めされた。カウチでもスポーツ観戦に欠かせないグアカモレ(アボカドチップ)をトランプのせいで食べられなくなれば、有権者は決していい気はしないだろう。

【参考記事】トランプごときの指示は受けない──EU首脳が誇り高く反論

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、米製品への残りの関税撤廃 トランプ関税

ビジネス

世界長者番付、マスク氏首位に返り咲き 柳井氏30位

ビジネス

再送-インタビュー:トランプ関税で荷動きに懸念、荷

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック上昇、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中