トランプは「台湾カード」を使うのか?
蒋介石には、北朝鮮と韓国のように、相対立する「元ひとつの国」として、両方が国家として国連に残るという選択もあった。
しかし日本の頭越しに米中接近が行われたことを知った日本は、あわててアメリカの後を追い、アメリカに同調して北京政府が主張する「一つの中国」を選択したので、日米に裏切られてしまったことを知った蒋介石は、屈辱に耐えることに忍びなく、国連を去ったのである。
それ以降の日米は自国の選択がまちがっていなかったことを証明するためにも、ひたすら中国の発展に力を注ぎ、中国のこんにちの繁栄をもたらしている。
中国の現在の覇権は、ある意味、日米が招いたものであり、言うならば自業自得だ。
そのきっかけを創ったニクソン元大統領などは、民主党に米中接近の功績を持って行かれたくなく、ニクソン政権の長期継続を図るために、民主党全国委員会本部への不法侵入や盗聴事件(ウォーターゲート事件)により弾劾され、現役大統領として初めて辞任している。
つまりニクソン氏は、権勢欲のために北京と接近したことになる。
その結果、中国を経済大国にのし上げ、軍事大国にまでしてしまったのだ。中国は日米との間で勝ち取った「一つの中国」原則を、すべての国に要求したので、今ではこれが国際的な通念となっているのだ。
そのまちがいに気づいたのがトランプ次期大統領であるとするなら、彼のこの度の発言は、「ようやく現実に気が付いたのか」という側面を持つと、筆者の目には映る。
"一つの中国"に疑義の余地はあるか?
中米の間には「3つの共同コミュニケ」が交わされている。1972年2月の「米中共同コミュニケ」(上海コミュニケ)と1978年12月の「中華人民共和国とアメリカ合衆国の外交関係樹立に関する共同コミュニケ」および1982年8月17日の「中米共同コミュニケ」(八・一七コミュニケ)だ。
その間の1979年1月1日、中米両国は正式に国交を正常化している。そしてこの瞬間、「中華民国」とは国交を断絶した。
この日まで待ったのは、米国内の反対論もあったが、何よりも蒋介石が1975年4月に他界したからだろう。いくらなんでも、国交断絶を宣言するのは、国連において落ち度のなかった蒋介石に残酷すぎるという「人道」としての憐憫の情が働いたのではないだろうか。