インターポールでサイバー犯罪を追う、日本屈指のハッカー
IGCIには、民間として捜査に携わっている日本人もいる。東京に本部を置く、サイバーディフェンス研究所の福森大喜もその1人だ。
福森は、もともと日本屈指のハッカーであり、世界のハッキング大会などでその名を轟かせていた人物である。近年はコンサルティング業務などに携わっていたが、そのサイバー能力を買われてIGCIに所属することになった。
福森はサイバー攻撃の手口や使われているマルウェアやテクノロジーを解析し、捜査を進める。「日本にいた頃、サイバー攻撃を受けた企業に行って調査を進めていくと、運がいい場合には、ほぼ間違いないというレベルで攻撃者にたどり着いたりします。でもそれ以上は何もできないというもどかしさがあった」と、福森は言う。「ここで捜査して、実際に国をまたいでサイバー攻撃を行なっていた犯人の逮捕にまでつながったケースもある。やっぱりやりがいはあります」
まさにサイバー空間にあるバーチャルな「犯罪現場」で捜査に奔走しているのだ。ここでの民間との連携が、後に日本でも生かされることになるだろう。
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官民の協力以外で、インターポールに属する日本にとって最大の財産となるのは、人脈だ。現在、IGCIには世界各国の警察組織から130人ほどが集結している。彼らはいずれも自国でそれなりに重要な役割を担っている捜査官たちで、それぞれが出身国の警察機関などに戻った後、サイバー捜査の分野で働いていくことになる。
安平は、「将来的にはインターポールの組織を通さなくとも、ここで広がった人脈で直接、技術協力や捜査などの情報をやりとりできる可能性があります。世界の警察ともつながり、事件捜査などにも生きることになる」と語る。
確かにそうした世界との個人レベルの連携は国にとっても財産になる。
では逆に、世界各国で第一線級の警察関係者たちが集まるIGCIでは、日常業務でも、各国の国民性や警察当局の扱いの違いなどによって混乱が生じることはないのだろうか。これはあまり知られていないが、インターポールやIGCIは、法の執行を行うことはない。つまり逮捕権を持たないのだ。その点は日本の警察庁と同じで、警視庁や道府県警察のような法執行といった業務は行わない。
山崎は、「インターポール自身が手を出せないのはみんな分かっているのですが、逆に各国から来ている同僚たちは出身国で法執行の権限を持っていたので、IGCIで歯がゆさを感じているというような話は耳にします」と言う。