インターポールでサイバー犯罪を追う、日本屈指のハッカー
Photo by Toshihiro Yamada
<昨年シンガポールに開設されたインターポールのサイバー捜査部門IGCIでは、日本からも警察や民間の専門家が出向して、世界最先端のサイバー犯罪捜査を担っている>(写真:インターポールのサイバーセキュリティ拠点IGCI)
国際刑事機構(インターポール、ICPO)は、日本で最も名の知られた国際機関の一つだ。
その理由は、国民的人気アニメ『ルパン三世』など日本のポップカルチャーによく登場するからだろう。とはいえ、現実のインターポールがどんな組織なのかを知る人は意外に少ないのではないだろうか。
1923年に設立された世界最大の警察機関であるインターポールには、日本を含む世界190カ国・地域が加盟している。2016年11月には、それまで総裁を務めたフランス人のミレーユ・バレストラジ氏に変わり、史上初めて中国人が総裁に選ばれたことで、賛否の議論を引き起こしている。
実は、日本とインターポールの関係は古い。1975年から警察庁は「セカンドメント(出向)」として職員をICPOに派遣しているし、1996年から2000年まで、日本人の兼元俊徳氏が総裁を務めたこともある。また財政的貢献は加盟国中、第2位であり、664万4000ユーロ(約9億万円)の分担金を支払っている。
そんなインターポールは、2015年4月に、シンガポールにサイバーセキュリティに特化した拠点「IGCI(インターポール・グローバル・コンプレックス・フォー・イノベーション)」を始動させた。IGCIの初代・総局長は警察庁出身の日本人、中谷昇氏が就いている。
IGCIにも、フランスが本部のインターポールのように、警察庁や民間から日本人が赴任している。セカンドメントだけを見ても、警察庁から現在、数名がIGCIに勤務している。
著者はシンガポールのIGCIを訪問し、世界的な警察機関で働く日本人の日常と、IGCIの実情について聞いた。
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インターポールのデジタル犯罪捜査官・山崎隆之は、IGCIのサイバーフュージョンセンターと呼ばれる部署に所属している。
サイバーフュージョンセンターには、大きなコンピュータースクリーンがいくつか設置され、画面に向き合う形で20席ほどのデスクが並ぶ。近未来的なオフィスだ。同センターは官民の橋渡し的な役割を担っており、世界中から集まるサイバー脅威の情報を収集する。すでにオープンになっている情報もあれば、そうでないものもあるが、そうした情報を分析した上で、世界の関係各国に情報を提供していく。
山崎の任務は、情報収集がメインとなる。IGCIには民間からも分析官などが多数勤務しているため、彼らをはじめとする情報提供者などから懸案事項や新たなサイバー脅威などについて情報を得る。また外部の民間パートナーとも会うなどして情報を仕入れる。そうした情報は、「サイバーアクティビティ・リポート」と呼ばれる報告書にまとめられ、世界の関係機関に提供される。日本の警察庁なども、実務につながるようなこうした情報をIGCIから得ている。