最新記事

情報セキュリティ

インターポールでサイバー犯罪を追う、日本屈指のハッカー

2016年12月7日(水)18時10分
山田敏弘(ジャーナリスト)

interpol02.jpg

警察庁からインターポールに出向中の山崎隆之氏(筆者撮影)

 山崎は、「私たちはインテリジェンスハブ(拠点)のようなもので、サイバー脅威に関するインテリジェンスを扱っています」と語る。つまり、サイバー犯罪対策のインテリジェンスの最前線に身を置いているということだ。

 実は山崎は今年4月にシンガポールのIGCIに配属されたばかりだ。もともと警察庁で交通畑にいた山崎は、交通分野でも信号機の管制など情報管理を担当していた。そこから情報技術解析(デジタル・フォレンジックス)やサイバー犯罪捜査を担当するようになり、山崎は「法律ではないですが、ルール作りなど、政府のIT戦略の策定などにも、警察庁の立場で携わっていた」と話す。その後、希望してIGCIに赴任することになった。

 同じくデジタル犯罪捜査官である安平俊伸は、2015年7月からIGCIで、国際的な会議や企画などを取りまとめる役割を担っている。

 警察庁時代、安平は情報技術解析の国際協力の取りまとめを担当していた。情報技術解析では、国際的な連携が技術的にも欠かせないため、日本代表として会議などに出席することも多かった。IGCIに来る直前まで警察庁のサイバー犯罪対策課などに籍を置いた安平は広報なども担当し、語学が堪能だったこともあって、IGCIに所属することになった。

 そもそもなぜ、インターポールのサイバー部門に日本人が送り込まれているのか。日本にとって、警察庁という官庁に属する日本人がIGCIに赴任することにどんな意義があるのか。

【参考記事】トランプが煽った米ロ・サイバー戦争の行方

 一つには官民協力という概念を実感できることがある。日本では、公務員倫理法などがあって、なかなか官民連携が進まない。企業とつながることが利益誘導と取られる場合もあるからだ。

 だがIGCIは、サイバーセキュリティを担うのに不可欠な官民連携が当たり前のように行われている。サイバー空間では官民の協力なしに、安全を守れない。インフラのほとんどは民間によって所有・維持されている。インターネットも多くの利用者が集まって作り上げている世界であり、民間の技術力がなければ何もできないと言っても過言ではない。

 IGCIではその点を割り切っており、民間との連携は重要視している。例えば民間のトレンドマイクロやカスペルスキー、NECなどは「ストラテジック・パートナー(戦略的パートナー)」と位置づけ、特に緊密に協力しているという。安平は、「IGCIは協力してくれる民間企業を歓迎しており、ここでは役所の目線ではなく民間とどうやって付き合うべきかという事を学べるので素晴らしい経験になっている」と言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中