民族大虐殺迫る南スーダン。国連安保理の武器禁輸措置決議になぜ日本は消極的なのか
国連安保理で争点となっている武器禁輸、紛争指導者の資産凍結等
こうしたなか、焦点となっているのが、南スーダンへの武器禁輸、紛争指導者(政府高官、反政府リーダー双方)の資産凍結等の措置である。
率直に言って、国際社会はもっと早く、こうした措置を講じるべきだった。
なぜいつも民族浄化を止められないのか、世界のリーダーが手をこまねいて何らリーダーシップを発揮できないまま人々が殺されていく過去の教訓にいつになったら真摯に向き合い、早期に適切な行動をとることになるのか、と感じざるを得ない。
しかし、それでも今からでも武器禁輸措置を講ずることは命を救うことになると、現地ジュバの市民社会は声をあげている。「このままではジェノサイドになる可能性がある」と。
こうしたなか、11月30日、アメリカ政府(サマンサ・パワー大使)はニューヨーク国連本部で開催されている安全保障理事会に、武器禁輸等に関する国連安保理決議を提出しようとしたが、断念を余儀なくされた。
なぜかといえば決議採択に必要な国連安保理のなかの9票を得られる見通しが立たなかったからだという。
現在の安保理メンバーは、
米、英、仏、露、中の常任理事国に加え、
アンゴラ、エジプト、日本、マレーシア、ニュージーランド、
セネガル、スペイン、ウクライナ、ウルグアイ、ベネズエラ
である。
なぜ、米国が断念したか、ニューヨークのNGO関係者に聞いてみたところ、ロシア、中国、ベネズエラやアフリカ諸国が乗り気でないだけでなく、日本やマレーシアのような国からも賛成を得られなかったからだという。
フォーリン・ポリシーのコラムに詳しく記載されているが、そこでは、「自衛隊を派遣している日本は南スーダン政府と対立したくない」と分析されている。
私が交流のあるニューヨークの安保理界隈の人々の間では、「自衛隊を派遣している日本にとって、『ジェノサイドの危険性があるなどの深刻な治安状況を確認する決議は避けたいのではないか?』」「自衛隊派遣に対して否定的な影響を避けたいのではないか」「しかし、武器禁輸をしないほうが、自衛隊は危険にさらされるではないか? 」などの憶測と疑問が流れている(日本政府の意図はわからない)。