難題山積のEUが注目する2017年の顔10人
オランダ極右政党「自由党」のヘルト・ウィルダース党首
世論調査では、反イスラムを掲げる自由党がオランダ議会で最大勢力を占める勢いだが、有権者がこの調査結果を実際の選挙で裏付けるとすれば、欧州の「選挙の年」の方向が定まる可能性がある。
複数政党による連立政権となるため、ウィルダース氏が支配者になるわけではないが、彼が大勝すれば、その後に予定するフランス、ドイツの選挙においても、極右への投票が視野に入ってくるかもしれない。
EU創設国の1つが、EU離脱を望むこの人物をどう対処するか、その様子を欧州は目の当たりにすることになる。主流派路線を堅持してウィルダース氏を権力から排除し、その一匹狼としての魅力を高めるのか。それとも、権力に取り込むことで、彼の過激な主張を政治の現実で丸め込んでしまうのだろうか。
メイ英首相
「ブレグジットとはブレグジット(英国のEU離脱)という意味だ」──。正式離脱に向けた2年間のカウントダウンを開始する書簡を3月末までにEU本部に送ることによって、メイ首相は自身のキャッチフレーズに向けて一歩踏み出す。
ポーカーフェイスを維持しつつ、自らの政権と、分裂の危機がささやかれるほど亀裂の広がる国家をまとめていかなければならない。そして、欧州側との離脱交渉が待っている。英国側に有利な条件となれば、後に続く誘惑に駆られかねない加盟国は多く、EU側は少しでも譲歩すれば新たな脱退の動きを促しかねないと恐れている。
フランス極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首
反EU派のルペン党首が、5月7日に予定する2回目の選挙でフランス大統領の座を獲得すれば、上記の展望にも意味はなくなるだろう。候補が乱立しているため、4月23日の第1回投票で同党首が勝利することはほぼ確実だが、2002年に父親が成し遂げられなかった過半数獲得に届くかどうかは疑問視する声が多い。
だが、ブレグジットとトランプ氏当選があっただけに、誰も世論調査を信じていない。48歳のルペン氏は、露骨な人種差別と反ユダヤ主義を掲げた父親には決して投票しなかった何百万人もの有権者の支持を勝ち得ている。大きな問題は、決選投票の相手が誰になるかだ。
EU創設国フランスで同氏が大統領になれば、EUは、いや少なくとも私たちが知るEUは、終わってしまうかもしれない。
アフリカ移民
アフリカ西部出身の23歳の若者は、冬の嵐が収まったらイタリアに渡航したいと考えている。だが、EUは援助予算をちらつかせて彼の出身国の政府に難民対策を強要し、リビア近海の哨戒を強化して難民の大量流出に備えている。ギリシャからシリア難民を押し戻すことに成功した戦術を再現し、難民たちのリスク対効果の計算を変えていこうという狙いだ。抑留されて本国に送還されるだけなら、サハラ砂漠と地中海という難関にあえて挑戦する意味があるだろうか、と。