難題山積のEUが注目する2017年の顔10人
ロシアのプーチン大統領
ロシアの指導者であるプーチン大統領は、自国の世界的影響力を回復するため、難解な戦術的ゲームを仕掛けている。プーチン大統領は、天然ガス供給の調整から対立勢力への支援に至るまで、多くの方法を用いて、西側の近隣諸国に対して友好的にも、敵対的にもなることができる。2014年のクリミア併合以来、EUには、プーチン大統領の次の一手を自信を持って予想しようとする者はほとんどいない。
EU各国首脳は、ロシアに対する制裁を継続するかどうかを7月末までに選択しなければならない。ウクライナに対するプーチン大統領の強硬姿勢を崩すことを目的とする制裁だが、EU加盟国の一部には不満もある。トランプ次期政権が米国による制裁を解除して共同歩調を乱せば、EUにおいても、制裁継続を阻もうとする加盟国の出現を防ぐために苦労を強いられるだろう。
イタリアのマッタレッラ大統領
抜け目のないシチリア島出身の弁護士だった75歳のマッタレッラ大統領は、マフィアによって兄を暗殺された後、政治の世界に入った。「台風の目」とも言うべき存在である。対立する諸政党が、今後変更される可能性のある制度の下で、いつ行われるかも分からない選挙に備えるなかで、マッタレッラ大統領は、彼らをうまくなだめすかして統治に当たらなければならない。
ユーロ加盟国は、巨額の財政赤字を抱えるイタリアと、経営難に陥った同国の銀行業界を懸念しつつ見守っている。ギリシャやポルトガルとは異なり、イタリアは破綻させるにも救済するにも規模が大きすぎるのだ。
ドイツのメルケル首相
9月に行われるドイツ総選挙で4期目をめざす62歳のメルケル首相は、欧州の指導者中の指導者だが、昨年以降、百万人もの難民を受け入れたことによる国民の怒りと不安に脅かされている。メルケル首相より右派に属するユーロ懐疑派が初議席を獲得する見込みであり、少なくとも、同首相の連立工作を複雑なものにするだろう。
ベルリンの壁崩壊による混乱の後、安定した欧州のカギとなるEUに対して、ドイツが長年にわたり力を注ぐよう保証してきたのは、東ドイツ出身の物理学者であるメルケル氏だ。しかし、もし近隣諸国が落伍し始めたとしたら、それでも彼女は奇跡を生み出せるのだろうか。
「マン・イン・ブラック(黒衣の男)」
この男は自分が住む欧州を憎むようになった。シリアとイラクで追い込まれた過激派組織「イスラム国」は、彼の怒りに火を付け、どのような手段であれ、行動を起こすよう促している。
さらに広い意味では、この男はすべての未知の存在、そして人為的であれ自然現象であれ、前例なき予期せぬ出来事の象徴である。それは、世論の一時的な動揺を引き起こし、新しい年に向けた欧州の計画や優先課題を脱線させかねない。
(翻訳:エァクレーレン)