最新記事

ロシア

プーチン高笑い、トランプのアメリカを含む3カ国が親ロ派にスイッチ

2016年11月15日(火)18時26分
トム・オコナー

モルドバの大統領に選出された親ロ派のドドン Gleb Garanich-REUTERS

 影響力を拡大し続けるロシアには朗報だ。東欧のブルガリアとモルドバ、それにアメリカで、ロシア支持を表明していた候補が相次いで大統領に当選を果たした。

 この日曜に行なわれた大統領選で勝利したブルガリアのルメン・ラデフとモルドバのイーゴリ・ドドンは、どちらも社会党が推した候補者で、ロシアとの関係改善を訴えていた。その前の水曜には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を褒めちぎってきた共和党の大統領候補ドナルド・トランプが米大統領選を制し、世界を驚かせたばかりだ。

【参考記事】トランプはなぜプーチンを称賛するのか

 3人の次期大統領には共通点が多い。全員、親欧米の既存の政治エリートが自国を破滅に導いていると主張している。元空軍司令官のラデブは、EU一辺倒の与党の手には乗らないと言ってきた。欧州の最貧国モルドバの第一副首相を務めたことがあるドドンは、14年に国内の3つの金融機関からGDPの8分の1に相当する10億ドルが消失する事件がきっかけで激化した反政府運動を追い風にしてきた。トランプは大統領選を通して、事あるごとに民主党の大統領候補ヒラリー・クリントンの政治経験の長さを逆手にとり、腐敗している、変わり映えしないと攻撃した。

【参考記事】NATOはロシアを甘く見るな──ラスムセン元NATO事務総長

そろって移民嫌い

 ラデブとトランプの2人は移民排斥、とりわけ難民の入国を厳しく制限する態度を示した点も類似する。ラデブはブルガリアが「移民のゲットー」になることを阻止すると有権者に訴えた。トランプはアメリカに入国する移民について、「トロイの木馬」に乗ったテロリストを招き入れるようなものだと言い、難民は安全保障上の脅威だと煽る主張を繰り返した。難民の存在がアメリカの「生活の質」を損ないかねないとも言った。一方のドドンは、先月行われた第一回投票に向けた選挙戦の最中、対立候補のマイア・サンドゥが当選すれば「難民による侵略」が現実になると警告するビラを配った。

 親ロシア派による勝利は、ロシア政府には願ってもないプレゼントだ。今年はロシアと西欧諸国の関係が一段と緊張した年。ロシアは14年にウクライナのクリミア半島を併合し、ウクライナ東部で親ロシア派に対する軍事支援を続けたことから、ヨーロッパ諸国の多くはこの地域でロシアの軍事プレゼンスが拡大することに懸念を強めてきた。ここ数カ月で、NATOとロシアは互いに冷戦以来となる大規模な軍事力の増強を進めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中