最新記事

2016米大統領選

トランプ勝利で日本はどうなる? 安保政策は発言通りなら同盟に亀裂も

2016年11月9日(水)19時20分

 11月9日、トランプ米大統領の誕生に、日本の外交・安全保障政策に携わる関係者の間では戸惑いの声が広がっている。選挙期間中の発言通り孤立主義的な方針を取るなら、日本は自主防衛の強化を迫られる。写真は10月23日、都内で行われた自衛隊の式典に参加する安倍晋三首相(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 トランプ米大統領の誕生に、日本の外交・安全保障政策に携わる関係者の間では戸惑いの声が広がっている。選挙期間中の発言通り孤立主義的な方針を取るなら、日本は自主防衛の強化を迫られる。

 しかし、日本は同陣営とのパイプが希薄で、米国の安全保障政策がどう変化するか見極められていないのが実情だ。

「矛」と「盾」の役割見直しも

 トランプ氏は選挙期間中、米軍駐留費を増額しなければ日本や韓国から撤退するなど、同盟国との関係見直しをほのめかしてきた。安倍晋三政権は集団的自衛権の行使を可能にするなど、自衛隊の役割を拡大して日米同盟の強化に腐心してきたが、トランプ政権の誕生で政策転換を迫られる可能性が出てきた。

 日本の元外交官は「日本は考え方を変えなくてはならなくなる。強い米国に守られていることに慣れきっていた」と話す。

 日米は自衛隊と米軍の役割分担を定めた「防衛協力の指針(ガイドライン)」を2015年に見直したが、米軍が「矛」、自衛隊が「盾」という基本原則を変えるところまでは踏み込まなかった。

 しかし、中国が軍事力を増強し、北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄しない中、トランプ次期政権の方針次第では、敵基地を攻撃する打撃力の保有議論が日本国内で盛り上がる可能性がある。

 外務省関係者は「自主防衛の強化を望む人たちにとっては、あれもこれも必要だ、と主張できるようになる」と指摘する。

知日派のキーパーソン

 とはいえ、トランプ氏が発言通り同盟国に負担増を求めるのかどうかを含め、日本政府は次期大統領の外交・安保政策の中身を具体的に把握できていない。ワシントンの日本大使館が今年に入ってトランプ陣営の情報収集と分析を進めてきたが、関係者によると、外務省幹部が知日派のキーパーソンに接触できたのは、最近のことだという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中