最新記事

自動運転車

早くも2017年が「完全自動運転」元年に?

2016年11月1日(火)10時50分
ヘンリー・グレイバー

Jasper Junen-Bloomberg/GETTY IMAGES

<今後登場するすべてのテスラ車が完全自動運転に対応。アプリ1つで車が来てくれる時代がやってくるのか>(写真・完全自動運転化に向けて大きく舵を切ったテスラ)

 テスラモーターズは先週、移動中のクルマの操作に人間がまったく関与しない「完全自動運転車」の実現に近づきつつあることを明らかにした。今後生産するすべての車に、完全自動運転が将来的に可能となるカメラやセンサーなどの装備を搭載するという。

 ソフトウエアを段階的に更新することで自動運転が可能な範囲を広げていき、最終的に完全自動運転を実現する予定だとしている。そうなれば専用のスマートフォンアプリを操作するだけで、車が迎えに来てくれる時代が到来する。

 これでテスラは、自動運転車開発競争の先頭へと一気に躍り出たようだ。「来年末までに、ロサンゼルスからニューヨークまで完全な自動運転で走破できるようにする」と、イーロン・マスクCEOの鼻息も荒い。もっとも現段階では、テスラが公開している4分間の自動運転紹介動画で我慢するしかない(運転手が一度もハンドルに触れることなく自宅の車庫を出て、勤務先での駐車を完了する内容)。

【参考記事】テスラが繰り出す強気の安全対策

 前例にとらわれない開発姿勢などで、これまでも物議を醸してきたテスラ。今回の「完全自動運転車」の発表は、規制当局とライバルメーカーを一層いら立たせることになりそうだ。

 自動運転中だったテスラ車がフロリダ州で死亡事故を起こし、ソフトウエアの安全性に懸念が生じたのは記憶に新しい。この事故に関しては米運輸省が原因を調査中だが、テスラ側は人間の運転よりも安全だと主張する姿勢を崩していない。今回の発表時にもマスクは、自動運転用の新たなハードウエアを搭載した車は、人間が運転する車よりも2倍以上は安全だと主張した。

個人がターゲットの意味

 その新装備のお値段は8000ドルで、8台のカメラ、12基の超音波センサー、そして車体前面のレーダーで構成される。だが完全自動運転機能を発揮するためにはテスラが社内でソフトウエアの安全性を確認して、規制当局の承認を得なければならない。つまりテスラは未完成で実装されていない技術の実現を約束することで、何十万台もの車を販売できる。何とも抜け目のない戦略だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中