ヤクザになった理由を7人の元暴力団員に聞くと...
だから暴力団離脱者が、「生きられない」という状況に陥ったとき、彼らは生きるため、非合法に稼ぐという手段を選ぶしかなくなる。しかも組織に属していたときには「掟」という鎖があったものの、離脱者は掟に縛られる必要もない。となれば、「金になることならなんでもやる」という方向に進んでしまうのはある意味で当然であり、かくして正真正銘のアウトローが誕生してしまうのである。
たとえば、覚せい剤を暴力団組員が扱うと、表向きは組織の掟破りということで処罰を受けます(実際は黙認していたとしても、組員が警察に検挙されたりすると、破門などの処分を受けます)。しかし、暴力団を辞めた人が覚せい剤をシノギにすることには、何の不都合もありません。さらに言うと、彼らが未成年に覚せい剤を販売しても、何の咎めも受けません。(24~25ページより)
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だからこそ、「悪いから排除する」というだけで済ませるのではなく、我々ひとりひとりが暴力団問題を考えなければならないと著者はいうのである。そのうえで、読者に向けて「なぜ人はグレるのでしょうか?」という問題提起をする。それこそが、本書の執筆意図だ。新たな暴力団加入者を増やさないため、「現時点で我々ができること」を探ろうという思いがあるのである。
そしてそれが、本書のオリジナリティへとつながっていく。すなわち、暴力団員(だった人)と家庭との関係性だ。アウトローたる暴力団員に、そもそも家庭的な影は薄い。しかし、「彼らが暴力団員になった理由」の多くが、実は育った家庭環境に起因しているというのである。
暴力団に加入する子どもたちの家庭は、彼らを放置し、教育を与えず、芸術を鑑賞する機会を与えず、場当たり的な躾を行う社会であるといえます。こうしてみると、家庭が子どもに「した」ことより、「しなかった」ことの方が多いかもしれません。(54ページより)
著者の調査によると、暴力団加入経験者には、「単身家庭」(離婚などに起因する一人親家庭)、共働き家庭や長期出稼ぎ(出張)家庭のように機能的観点からみた「擬似単身家庭」、家庭内暴力が絶えない「葛藤家庭」、学童期に門限がないなど親が躾や勉強の面倒を見ない「放置家庭」、親と子の会話が極めて少ない「意思疎通上の機能不全家庭」などの出身が多いのだそうだ。もちろんそうした家庭に育った人のすべてがそうなるわけではないが、その確率が高いということである。
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事実、著者が話を聞いた7人の元暴力団員も、総じてそのケースにあてはまる。