プーチンの思うつぼ? 北方領土「最終決着」の落とし穴
国後、択捉は19世紀半ばに日ロが国交を樹立した際に日本領と認められた。それ以来、1945年のソ連軍占領や47年の日本人住民の強制追放まで一貫して日本の実効支配の下にあった。日本はアメリカに言われたからではなく、自分のものだから返還要求をしているのだ。自国の領土を安易に譲る国家は世界で相手にされない。日本の場合、尖閣諸島、竹島だけでなく、沖縄にさえ手を伸ばしてくる国が出てくるだろう。
領土問題は、常に「交渉を進めている」状態に維持しておく必要がある。でないと、相手の実効支配を黙認した格好になり、法的に不利になる。ロシア本土でインフラなどを両国が50対50の負担で建設したりして、ロシアをいつも引き付けておくことも必要だ。
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共同開発するにしても、ロシアの実効支配を認めるべきではない。起こり得る刑事・民事上の係争をロシアの官憲がロシア法で裁くのをのんではいけないし、開発に当たっては日本人旧島民の地権も考えねばならない。
「最初に歯舞、色丹返還。次に国後、択捉の返還交渉」という2段階論は非現実的だ。ロシアは歯舞、色丹返還で最終決着だ、と主張するだろう。プーチン政権は、日本が考えるほど世界で孤立もしておらず、経済が崩壊間際でもないので、手ごわい。
安倍政権は民進党内の足並みが乱れている今、「領土問題での成果」がなくても総選挙を打てる。12月のプーチン訪日で重要なのは、領土問題の最終的解決を焦ることなく、「日ロ関係と領土問題解決を前向きに進めていく枠組み」をしっかり、じっくり合意することだろう。
[2016年10月25日号掲載]