最新記事

フィリピン

「これは戦争だ」比ドゥテルテ大統領の右腕、死者増加を予想

2016年10月12日(水)10時57分

 ドゥテルテ大統領は麻薬密売業者の殺害をたびたび呼びかけており、デラロサ長官も扇動的な発言を繰り返している。

 先月の演説では、麻薬常用者と密売業者に、貧困層を搾取することで富を築いた麻薬王たちを殺すよう呼びかけた。

「ここの麻薬王が誰だか知っているだろう。彼らの家に行き、ガソリンをかけて火をつけろ。怒っているところを見せてやれ」

 デラロサ長官はこの「麻薬戦争」における作戦を熟知しているだけに、殺害に関して外部からの調査が行われる場合には重要な対象になる可能性があるとフィリピン人権擁護連合のRose Torajano事務総長は語る。だが、誰かがそのような調査を行うのかどうかは不明だ。

「彼は大統領の優秀な兵隊だ。だが彼にも恐怖感はあるだろう」と同事務総長は言う。

 デラロサ長官は、警察の取り締まり中の殺害は合法であり、「捜査過程での死亡」の大半は麻薬シンジケートによる殺害であると確信しているとロイターに語った。「彼らはお互いに殺し合っている」

プレッシャーを感じる

 個人的には、デラロサ長官は真剣ではあるが礼儀正しい人物であり、そして彼はプレッシャーを感じていると言う。

「私が心配しているのは、自分に期待されていることを完遂できないのではないかということだ」と彼はロイターに語った。

 ドゥテルテ大統領は9月18日、麻薬撲滅作戦をさらに6カ月延長すると宣言したが、デラロサ長官は時間が足りないという焦りを覚えると語る。

 長官によれば、作戦の最大の障害は、現地では「シャブ」と呼ばれている中毒性の高い麻薬、結晶メタンフェタミンの多数の常用者に対する更生サービスを提供すること。そして、麻薬の国内流入、特に中国からの流入を防ぐことだという。

「自首」と呼ばれる手続きによって、当局に届け出た常用者・密売人は70万人以上に及ぶが、支援制度や施設は極めて少ない。現地メディアの報道によれば、届け出た人々も多数殺害されているという。

 デラロサ長官はロイターに対し、麻薬戦争による死者の数は増え続けると予想する。「日ごとに死者数は増えている。逮捕者も、自首する者も毎日増えている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

オーストラリア、16歳未満のSNS禁止へ 1月から

ワールド

ヒズボラが停戦合意違反、イスラエルが非難 レバノン

ワールド

豪中銀総裁「当面は利下げできず」 コアインフレ依然

ワールド

米中が囚人交換、相互に3人釈放 米は渡航勧告を緩和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖値改善の可能性も【最新研究】
  • 2
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    トランプを勝たせたアメリカは馬鹿でも人種差別主義…
  • 5
    谷間が丸出し、下は穿かず? 母になったヘイリー・ビ…
  • 6
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 7
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 8
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 9
    日本を標的にする「サイバー攻撃者」ランキング 2位…
  • 10
    NewJeansはNewJeansじゃなくなる? 5人と生みの親ミ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 9
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中