前進できない野党の憂鬱:コービン労働党首再選
反コービン陣営がプラグマティズムを重んじるなら、いい加減でこの現実を認めるべきだろう。彼らが本当にリアリストなら、「コービンさえいなくなれば」という理想も捨てるべきだ。あるものでやっていくのが本物のリアリストだろう。
労働党がクーデターだ何だと大騒ぎしている間、地べたの人々は毎日仕事に行き、子供を学校に送り迎えし、たまにパブで飲んだりして淡々と暮らしてきたのである。彼らにとっては労働党の党首選など、「またか」ぐらいの感慨しかない。そしてそうした人々の数は、コービンが集会で動員する数よりも圧倒的に多いのだ。
だからこそ、もはや労働党の外の人々に労働党の未来を決めてもらうしかないのではないかという声もある。
労働党に自らの危機を直視させるには、総選挙で審判を受けるしかないように思えてきた。だから多くの労働党議員が(たとえ自分たちが負ける危険があっても)早期選挙を望んでいて、その瞬間が早く来たほうがいいと思っている。労働党に希望があるとすれば、それは有権者たちが握っている。彼らだけが労働党を変えることができる。だがその時まで、労働党が無意味に失敗する道を自ら歩んでいることで、最も高い代償を払っているのは有権者たちだ。
出典:https://www.theguardian.com/commentisfree/2016/sep/22/general-election-labour-crisis-jeremy-corbyn
「ブレグジットが突き付けたものは、すべての人々がその一部であると感じられるグローバル経済の必要性」
と識者たちも、ジャーナリストたちも、保守党の首相も、あのホーキング博士でさえ言っているのだ。「富の分配」という本来ならば左派の十八番であるべき言葉が再び人々の口にのぼっている。
それなのに労働党は「君たちは左すぎる」「そっちこそ右すぎる」といつまでも内紛を続けているという空しさに秋風が吹きぬけてゆく。
[執筆者]
ブレイディみかこ
在英保育士、ライター。1965年、福岡県福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。2016年6月22日『ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)発売。ほか、著書に『アナキズム・イン・ザ・UK - 壊れた英国とパンク保育士奮闘記』、『ザ・レフト─UK左翼セレブ列伝 』(ともにPヴァイン)。The Brady Blogの筆者。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。