前進できない野党の憂鬱:コービン労働党首再選
リバプールで行われた労働党集会 Darren Staples-REUTERS
<9月24日、英国労働党首選でジェレミー・コービンが圧倒的支持を受けて党首に再選された。しかし、彼を支持した人の中にも、次の総選挙で「勝てるわけない」と思っている人が多い。前進できない野党の憂鬱は深い...>
思えば、過去1年間の労働党は権力闘争に明け暮れてきた。EU離脱などという一大事に国が直面している時に、労働党がやっていることといえば党首選である。なんじゃそりゃ、と脱力するのは普通の反応だろう。
「欧州に新たな政治のフォースが覚醒したのは確かだ。次なる彼らのハードルは『運営』だ」と昨年わたしは書いたが、このハードルは高すぎたのだろうか。
先週末、英国労働党首選でジェレミー・コービンが圧倒的支持を受けて党首に再選された。驚くことではない。172人の労働党議員がコービンに不信任案を提出したときから、「またコービンが選ばれる」とメディアも巷の人々も言っていた。なぜなら、党というものは議員よりも末端党員のほうが圧倒的に多いのであり、その党員が彼を支持しているからだ。
トップダウンかグラスルーツか
1987年に、左派運動家で学者のヒラリー・ウェインライトが書いた著書『Labour: A Tale of Two Parties』の中で、労働党に昔から存在するという相対する2つの陣営はこう定義されているそうだ。
まず、一方は、トップダウンの指揮系統で躍進する、選挙選での成功にのみ関心を持つ労働党のエスタブリッシュメント。彼らは政権に就くことだけを目的にしているように見える。そしてもう片方は、片足を労働党に、そしてもう片方の足を広義な社会運動に置き、議会政治だけでは達成できない抜本的な社会改革に関心を持っているグラスルーツ陣営。
前者は自分たちはプラグマティズムに重きを置くと言い、後者は自らをアクティヴィストと名乗る(コービンは昨年労働党党首に選ばれた時、就任演説で「私は一人のアクティヴィストだ」と言った)。また、前者は自らをリアリストと呼び、後者は理念を重視する。
現在の労働党では、コービンに不信任案を突き付けた議員たちが前者で、コービン陣営(モメンタムを含む)が後者だ。リアリストを自任する労働党議員の多くは、コービンでは選挙に勝てないと確信している。