前進できない野党の憂鬱:コービン労働党首再選
コービンとその陣営が抱える問題
「こんなことを書くと、「ブレア派に転身した」とか「右翼」とか言われてしまうのだろうが」とくどいほど前置きしながら、オーウェン・ジョーンズはコービンとその陣営を批判する。コービンがネットのソーシャル・メディアのみを信じすぎ、はるかに多くの人々が見ているテレビなどのメディアに出て肝心な時に発言しようとしないこと。反緊縮を謳っていたはずなのに、影の財相ジョン・マクドネルが「財政均衡だいじ」と言い出し、何がしたいのかよく見えなくなってきたこと(トマ・ピケティとデヴィッド・ブランチフラワーは労働党の経済アドバイザーをやめている)。若者だけの支持を狙い過ぎ、中高年に支持される政策を打ち出さないこと。北部の労働党支持者たちがEU離脱派に回った事実を深刻に受け止めていないこと。等々、書き連ねてある。
(とは言え、個人的にもっとも脱力したのは、リバプールで行われていた党大会会場の警備が手配されてなかったことが直前になって判明し、早急に手配しなければ警察が会場を閉鎖すると報道された時だった。これはもう、「運営」以前の問題である)
また、コービン支持者たちの悪評もいつまでたっても収まらない。コービン支持者は奇妙な陣営だ。きらきら瞳を輝かせた理想に燃えるインテリジェントで優秀な若者の集団、と言われるかと思えば、一方では少しでも意見の違う者や、コービンに反対する者にはツイッターで総攻撃を浴びせたり、電話で嫌がらせをしたりする、ミリタントな集団とも言われる。7月には40人の労働党女性議員たちが「レイプや死の脅迫、車を破壊されたり、窓から煉瓦を投げ入れられた」として、特に女性に対する虐待行為をやめるように自分の支持者たちに呼び掛けてほしいとコービンに書面で要求していた。
それでもコービンは勝つ
オーウェン・ジョーンズは、批判しながらも、今回もコービンに投票したと発言している。いまは再び気を取り直したようにコービンの援護射撃をしているが、彼が抱えていた疑念は本当に消えたのだろうか?
一方、反コービン派が抱える最大の問題は、彼らにはコービンに勝てるようなオルタナティヴな党首候補も政策もないということだ(コービン陣営の政策がミリバンド時代のそれと似てきている以上、両者の政策は本人たちが言うほど違わない)。
とりあえず、現在の労働党内部ではコービンは無敵なのだ。だから何度議員たちがクーデターを起こし、党首選をやっても彼が勝つ。