習近平と李克強の権力闘争はあるのか?Part 2――共青団との闘いの巻
全人代開幕式を終えて席を立った習近平と李克強(2016年3月5日) Jason Lee-REUTERS
習近平と李克強の間の権力闘争に関する第二弾として、今回は習近平が李克強の権力を削ぐために共青団(中国共産主義青年団)を弱体化させようとしているという報道に関して考察する。
【参考記事】習近平と李克強の権力闘争はあるのか?――論点はマクロ経済戦略
習近平が共青団を狙い撃ちしているという報道に関して
胡錦濤時代に中共中央書記処書記兼中共中央弁公庁主任として、胡錦濤の最も身近で仕事をしていた令計画が2015年1月7日に逮捕されたのをきっかけに、「習近平がついに共青団の弱体化に手を付け始めた」という報道が散見される。
これはとんでもない誤解で、腐敗撲滅に関しては、実は胡錦濤政権時代からあり、2003年に「中央紀律検査委員会 中央組織部」なる「巡視組」を設立させて、なんとか腐敗分子を摘発しようと試みていた。
しかし胡錦濤時代の中共中央政治局常務委員(チャイナ・ナイン)は、胡錦濤派(胡錦濤を支持する者)3人に対して江沢民派6人。多数決議決で何をしようとしても「政治が中南海を出ることができない」状態だった。なぜなら腐敗の総本山は江沢民だからだ。
2009年に「中央巡視組」と改名したが、それでも江沢民派に抑えつけられていた。
ところが習近平政権(チャイナ・セブン)になってから、事態は一変した。
そもそも習近平自身が江沢民の推薦によって2007年に国家副主席になっていたことから、江沢民としては習近平を抑えつける手段が困難となった。
一方、腐敗がここまで蔓延したのでは、一党支配体制はこのままでは崩壊することを、チャイナ・セブンの誰もが認識していたので、中共中央紀律検査委員会の力を強化し、王岐山を書記として「中共中央巡視工作領導小組」の調査に基づき、腐敗撲滅に向かって猛進し始めた。
そのために「第一輪 巡視」「第二輪 巡視」「第三輪 巡視」......といった感じで、全国の大手国有企業だけでなく、教育部とか中国社会科学院あるいは新華社に至るまで、全ての国家組織が調査の対象となったのである。
その数は大きく分ければ百を超しており、小さく分類すれば何百にも及び、ようやく順番として共青団も対象となっただけのことだ。
現在、中国共産党員の数は2015年末統計で8779.3万人。
共青団団員の数も、2015年末統計で8746.1万人。
共青団員はやがて、ほぼ全員が中国共産党員となる。いわば共産党員予備軍である。なんとしても一党支配体制を維持したい習近平政権にとって、党員の予備軍である共青団を大事にしていかなければ、政権基盤は弱体化する。