【小池都知事】クリーンな東京五輪を実現するために
五輪を変える3つの構想
理由の1つとして挙げられるのが、大会の計画や運営担当が分散化されていて、責任の所在がはっきりしないことだ。
もちろん責任の一端を担い、コストの一部を負担するのは中央政府だが、多くの仕事を抱える官僚がオリンピックの開催準備に専念するのは不可能だ。
従って大抵は開催都市の行政組織が不足を補い、コストの大部分を負担することになる。しかし資源も専門知識も限られているため、都市レベルの政府はコスト管理に適任とは言えない。
地元の大物やビジネス関係者から成る大会組織委員会も問題になり得る。委員会は資金集めに貢献するが、主要施設の建造地や施工者を決めるに当たって大きな影響力を持っている。
こうした状態では、誰もがすべてに責任を持つことになる。言い換えれば、誰も責任を持たないということだ。だからこそオリンピックは無駄遣いと汚職と公的債務にたたられてきた。
【参考記事】五輪開催コストは当初予算の「5割増し」が平均額
だが東京大会は、これまでと大きく異なるものになる。第1に、私たちは契約の透明性を実現する。税金によって行われるイベントである以上、契約受注を目指す事業者は民間部門におけるような守秘義務を期待してはならない。
第2に、大会の監査業務は特別に選任した会計士と汚職対策専門家に委任する。巨額のカネが絡むのだから、「慣例どおり」で処理することは許されない。
最後に、関係者にそれぞれの責任を果たすことを求める。IOC(国際オリンピック委員会)や企業スポンサー、各国のテレビ局は、予算が手頃で汚職と無縁の五輪を理想とすべきだ。開催地に大変なコストを強いつつ、自らは巨利を貪るのはオリンピック精神に反する。
「より速く、より高く、より強く」というモットーに、東京大会では「よりクリーンに」を加えることを提案していきたい。汚職もドーピングもないスポーツの祭典――それこそがオリンピックの精神にかなう。
<この記事は、英文オピニオン・サイト「Project Syndicate」に掲載された小池百合子氏の意見記事を、翻訳・編集したものです>
[2016年8月30日号掲載]