「キンドル読み放題」の隠れた(けれども大きな)メリット
Kindle Unlimitedには、もうひとつ隠れた(けれども大きな)メリットがある。それは、「読書依存症の人を増やす」ことだ。
本の販売数が減っている原因のひとつは「時間の奪い合い」だ。かつてのライバルはテレビくらいだったが、インターネットが普及してからは、現代の人々はゲームやソーシャルメディアに時間を奪われて、読書の時間どころか寝る暇もない。
だが、「読み放題」でいくらでも本を試せるとなると、ビュッフェのような心境になりがちだ。食べ放題のビュッフェでは、お腹がいっぱいでも、あれもこれも皿に乗せてつい食べ過ぎる。キンドル読み放題でも、「面白そうだな」と思った本をどんどんKindleに入れられる(同時には10作品まで)。ちょっと読んで気に入らなければ、さっさと見捨てて別の作品を試せばいいし、これまで馴染みのないジャンル(味)にも手を出せる。
そうしているうちに、思いがけない作品や作者と出会い、そこからシリーズまるごと読み続けてしまうこともある(筆者の場合は上記のレイチェル・アーロンの作品がそうだった)。それがコミックであっても、雑誌であっても構わない。読者をインターネットやソーシャルメディアから奪うことができれば、「読書人口」のパイそのものが大きくなる。
「くだらない作品を沢山読んでも仕方がないだろう」という批判は野暮だ。選択眼は、多くの本を読むことによって身につくもの。「読みたいものを、読みたいだけ読む」、そして多くの作品の中から隠れた名作を見つける。そのゲームを楽しむ人が増えれば、出版業界そのものが活気づいてくれるのではないだろうか。