最新記事

南シナ海

インドネシアが南シナ海に巨大魚市場──対中強硬策の一環、モデルは築地市場

2016年8月29日(月)16時35分
大塚智彦(PanAsiaNews)

Antara Foto/Indonesian Navy/via REUTERS

<南シナ海で対中強硬策を掲げるインドネシアは、中国と互いに船で体当たりしたり威嚇発砲したりと果敢な「ドンパチ」を繰り広げているが、その一方で、中国が権益を主張するインドネシア領ナツナ諸島に、築地市場をモデルにした魚市場を作ろうとしている> (写真は、ナツナ諸島近海でインドネシア海軍の艦船の前を横切る中国海警船)

 南シナ海を巡る覇権争いがエスカレートしているが、南沙諸島で領有権を主張しているのは中国、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイの5カ国1地域である。オランダ・ハーグの仲裁裁判所が7月12日に中国が全海域に及ぶ領有権主張の根拠としている「九段線」内の権益に「法的根拠はない」との判断を下したことで、中国は国際社会を敵に回し「分の悪い闘い」を強いられている。 

 あまり報道されていないが、実はこの九段線の南端、「舌の先端」に当たる部分がインドネシア領ナツナ諸島の排他的経済水域(EEZ)と重なっていることから、中国の権益主張にインドネシアも対処せざるを得ないという実状がある。インドネシアは特に海洋政策においては対中強硬策を取り続けており、南シナ海の南端では中国漁船とインドネシア海洋治安当局、海軍による仁義なき闘いが繰り広げられている。

map.jpg
ナツナ諸島の位置 Google マップ

【参考記事】南シナ海で暴れる中国船に インドネシアの我慢も限界

拿捕、拘留そして撃沈の強硬策

 南シナ海の地図をみてみると、マレー半島とボルネオ島(インドネシア語でカリマンタン島)のほぼ中間にあるナツナ諸島は大小約150の島からなり、北部の大ナツナ島を中心に約7万人が住むインドネシア領である。南シナ海とジャワ海やマラッカ海峡を結ぶ海の大動脈に位置する戦略上きわめて重要な諸島である。

 中国はナツナ諸島北方海域を「中国の伝統的な漁場」として海警局艦船を伴った漁船群による違法操業を続けている。なぜ問題かというとナツナ諸島から200海里(約370km)のインドネシアのEEZ内や領海内にまで侵入して違法操業を繰り返しているからだ。この海域は豊かな漁場で中国だけでなくベトナムやタイ、マレーシアの漁船も入り乱れて違法操業を続けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮が短距離ミサイルを発射、日本のEEZ内への飛

ビジネス

株式・債券ファンド、いずれも約120億ドル流入=B

ワールド

中国、総合的な不動産対策発表 地方政府が住宅購入

ビジネス

アングル:米ダウ一時4万ドル台、3万ドルから3年半
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中