アメリカの外交政策で攻守交代が起きた
Jim Young-REUTERS
<これまでにない、外交下手の共和党vs安全保障に強い民主党という構図になった今回の大統領選。逆転劇はトランプの命取りになる?>(写真は7月の民主党全国大会で大統領候補指名を受諾したクリントン)
歴代の大統領選挙で、二大政党の候補がどのように外交政策を議論していたか記憶にあるだろうか。共和党はドワイト・アイゼンハワーからジョン・マケインまで、自分には堅実な外交政策を運営する能力があるという雰囲気を醸し出すことに努めた。反対に民主党はジョージ・マクガバンからジョン・ケリーまで、安全保障に弱腰と批判されてきた。
今年の大統領選はこれまでとはまるで違う。民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官は冷静な口調に終始する一方、共和党候補のドナルド・トランプは何をしでかすか分からない、外交の素人。同盟国との関係や地球規模の課題、国際機関の軽視など、従来の共和党の堅実路線から逸脱するトランプは過去の共和党候補と正反対だ。
【参考記事】自称「救世主」トランプがアメリカを破壊する
先月末の民主党全国大会では、クリントンがかつてニューヨーク州選出の上院議員として9・11同時多発テロ後に取った果敢な行動や、国務長官として培った安全保障政策の経験が最大の目玉として挙げられ、かつての同僚や部下たちが応援演説を行った。
その翌日、トランプは国務長官時代の私用メール問題でロシアにクリントンへのハッキングを促すなど、従来の外交常識をひっくり返した。プーチン政権との危険な関係について、議会で本格的に追及されてもおかしくないほどの失言だ。
中国はトランプに期待
ウォール・ストリート・ジャーナルとNBCニュースによる5月の合同世論調査では、外交政策の手腕への支持率でクリントンはトランプを27ポイント上回った。軍の最高司令官としての支持もクリントンが10ポイント高かった。もちろん、こうした数字は今回の波乱に満ちた両党の党大会の後では変化もあろう。今後、トランプは民主党政権のテロ対策を弱腰と非難することだろう。それでも、外交政策についてクリントンの優位が揺らぐことはもうない。