トルコにあるアメリカの核爆弾はもはや安全ではない
対照的に、インジルリクとイタリアのアビアノ空軍基地は、米空軍が運営し、基地内に備蓄している核兵器の安全確保も米軍が担っている。双方ともアメリカを含むNATO諸国が費用を負担し、最近になって新たな防護柵を導入した。そうしたことからアビアノ空軍基地がインジルリクにある核兵器を引き取れる可能性はあるが、格納施設がわずかしかないのが難点だ。
残るのは、米軍が運営する空軍基地があるイギリス(レイクンヒース)とドイツ(ラムシュテイン)だ。欠点がないわけではないが、両基地とも現在核兵器を配備しておらず、安全面も問題ない。トルコに核兵器を保管するよりは健全な選択に見える。
イラン牽制の役割も
クーデターの最中、エルドアンはドイツへの亡命を求めたが拒否された、という報道もあった。エルドアンはだめでも、核爆弾ならアンゲラ・メルケル首相が引き受けてくれるかもしれない。
もちろん、インジルリクがアメリカの核兵器保管場所になったのにも理由がある。アメリカ政府高官の中には、たとえ核兵器が搭載できる航空機がなくても、イランの隣国であるトルコに核兵器があれば、イランによる核の使用を思いとどまらせることができるという考えがあった。
トルコにある核兵器をドイツやイギリスに再配備しようとすれば、中東の友好国が反対する可能性もあるだろう。だが、先週末のクーデター未遂事件以降は、核兵器をトルコに置いたままにすることのほうが恐ろしい選択に思える。