イギリスEU離脱で復活する「量的緩和の呪縛」
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7月2日、金融危機を受けて2009年に各国中央銀行が量的緩和(QE)を導入した際、緩和のeasingを「永久の」を意味するEternalに置き換えた「QEternal」という言葉が半ば冗談で叫ばれていた。写真は雨雲で覆われたロンドン東部の金融街カナリー・ワーフ。1日撮影(2016年 ロイター/Reinhard Krause)
金融危機を受けて2009年に各国中央銀行が量的緩和(QE)を導入した際、緩和のeasingを「永久の」を意味するEternalに置き換えた「QEternal」という言葉が半ば冗談で叫ばれていた。危機のどん底から世界経済を立て直すには何年も続く可能性もあったからだ。
欧州連合(EU)からの離脱派が多数を占めた英国民投票のショック後は、これが冗談ではなくなり、ポンドやユーロ、円を何百億もつぎ込む新たな量的緩和の波が今にも来そうな気配となっている。
英国民投票後、世界の債券市場の利回りは数年来の低水準となり、史上最低を記録するものも。欧州格付け大手フィッチ・レーティングスによると、利回りがマイナスの債券は11兆ドル分を超える。
さらなる利回り下落で、銀行や年金基金のほかさまざまな投資家の収益は一日ごとに萎んでいく。
イングランド銀行(英中銀)の債券買い入れ額は3750億ポンドで、この4年間は量的緩和を停止しているが、再開する見通し。欧州中央銀行(ECB)、日銀も追加緩和が予想されている。英中銀のカーニー総裁は6月30日、EU離脱ショックによる国内経済への打撃を和らげるため、数週間以内の追加緩和は「おそらくある」と述べた。
米連邦準備理事会(FRB)でさえも、2014年10月に終了した量的緩和を復活させ「QE4」に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれるかもしれない。元FRB当局者で09年の量的緩和導入の際、重要な役割を果たしたピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、ジョセフ・ギャグノン氏は「まず利下げがあり得る。マイナス0.25%にすることでさえ」と指摘する。
「(利下げの後)、さらに必要があればQEが選択肢になる。確率は低いが、離脱ショックでそれを検討する時に少し近づいている」という。