イギリスEU離脱に現実味、ちらつく為替協調介入の影
フランの教訓
外為市場の有力参加者たちは、昨年1月にスイス中銀がフランの対ユーロ相場上限を撤廃したことによって引き起こされた市場の価格形成機能の弱体化が、ブレグジットで再現されるのではないかと不安を募らせている。
英国民投票の結果が判明し始める時間帯に主な取引が行われるアジア市場では、流動性が縮小し、売買気配値が広がる公算が大きいとみられる。
フラン上限撤廃直後の市場では、行き過ぎたフラン高のためにいくつかのリテールブローカーが破綻し、主要銀行やヘッジファンドも多額の損失を被った。
ロンドンで活動する通貨ストラテジストは公の場で介入を論じることにはあまり乗り気ではないが、ブレグジットが実現すればポンドの下落率は2桁になると多くが予想している。
このため一部の英市場関係者はイングランド銀行(英中央銀行、BOE)に対して、売買価格差が開き過ぎるようなら相場の乱高下を抑えるために介入に動ける態勢を整えるべきだと助言した。
2008年の世界金融危機においては、流動性が消滅した事態を受けて主要中銀が相互に締結した通貨スワップ協定を利用し、市場に資金を供給した。
HSBCのストラテジスト、ドミニク・バニング氏は「過去には中銀が不安定な市場に介入した事例はいくつかある。もちろんわれわれは今も、何が起きるのかもしくは起きないのか思案を続けている」と話した。
(Patrick Graham、Anirban Nag記者)