最新記事

2016米大統領選

トランプ正念場、共和党の巨大スポンサー・コーク兄弟のご機嫌伺いへ

2016年6月10日(金)17時20分
テイラー・ウォフォード

Carlo Allegri-REUTERS

<アメリカ政界の黒幕として知られるコーク兄弟にトランプが接近。これまで資金援助を受けないことを売りにしてきたトランプが、本選でのヒラリーとの対決に向けていよいよ資金調達に動き出した。だがコーク兄弟はトランプを嫌っている> (写真はコーク兄弟の弟デイビッド)

 米大統領選で共和党の候補指名が確実となったドナルド・トランプが、保守派の大富豪コーク兄弟にすり寄り始めた。巨大企業の経営者であるチャールズとデイビッドのコーク兄弟は、前回2012年の大統領選に1億2200万ドルを投じ、今年の大統領選では10億ドルを使う予定だという。トランプが候補指名を獲得しようというまさにこのタイミングでの会談となる。

来週、コーク兄弟の代理人と面会か

 今週「USAトゥデイ」のインタビューに答えたチャールズ・コークは、トランプ陣営からコーク側の代理人と会談したいという申し出があったことを明らかにした。コーク側もこれに合意した。会談の日程はまだ設定されていないが、トランプ陣営の広報担当者は、声明の中で「来週頃」になると語っている。

 コーク兄弟はアメリカの保守派の中で最大の影響力を持つ人物で、予備選の期間中にはトランプを共和党の候補にしたくないと思っていたことで知られる。コーク兄弟は予備選でどの候補も支持しなかったが、トランプの優勢が明らかになると、トランプのことは「大統領職を熱望するカルト(狂信者)」と呼んで無視していた。

【参考記事】アメリカ政治を裏で操るコーク兄弟の「ダークマネー」

 コーク兄弟は自由主義経済を信奉しているが、これはトランプの「反自由貿易」政策とは合致しない。さらにチャールズは、最近トランプが連邦地裁のゴンザロ・クリエル判事を「メキシコ人」と呼んで攻撃していることを不快に感じている。前述のインタビューでチャールズは、トランプの攻撃を「人種差別主義か、固定観念に縛られたステレオタイプ」と非難している。一方トランプも、コーク兄弟の支援を受けて当選した共和党政治家を「操り人形」とコケにしている。

【参考記事】トランプのメキシコ系判事差別で共和党ドン引き

 チャールズは、コーク側は「誰とでも喜んで対話する」と語り、トランプ陣営も「共通理解」を深めたいとしている。しかし同時にチャールズは、トランプに説得されることはないだろうとも語った。トランプが大統領にふさわしいと思うか尋ねられたチャールズは、「その答えはわからない」と明言を避けた。

 トランプが大統領にふさわしくないと思っているのは何もコーク兄弟だけではない。保守派一般どころか共和党内の大勢の人々がそう考えている。トランプ支持を表明したばかりのポール・ライアン下院議長も今週、トランプを「ふざけた態度がイラつかせる」と非難していたが、同時にトランプに「共和党が誇れる選挙戦を見せてくれることを望む」とフォローしていた。

【参考記事】トランプに「屈服」したライアン米下院議長の不安な将来

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中