地中海で溺れた赤ちゃん、難民の悲劇は止まらず
26日遅くリビアのサブラタ近くの港を出発したボートから小さな命が失われた──
5月30日、先週だけで何百人もの難民が地中海で溺れたとみられるなか、救助隊員の腕に抱かれた溺れた赤ちゃんの写真が、人道支援組織によって公開された。写真はリビア沖で転覆するボート。伊海軍が25日に公開した。ドイツの人道支援組織によって27日に引き上げられた、溺れた赤ちゃんが乗っていたボートとは異なる(2016年 ロイター/Italian Marina Militare)
先週だけで何百人もの難民が地中海で溺れたとみられるなか、救助隊員の腕に抱かれた溺れた赤ちゃんの写真が30日、人道支援組織によって公開された。この組織は欧州当局に移民の安全な移動経路を確保するよう訴えている。
1歳未満とみられるこの赤ちゃんは27日、木製ボートが転覆した後、海から引き上げられたという。その2日後には、45の遺体がイタリア海軍の艦船によって、同国南部のレッジョ・ディ・カラブリア港に搬送された。この艦船は同じ転覆事故からの生存者135人も救助している。
寝ている赤ちゃんをあやすかのように抱くドイツの救助隊員を写した画像は、リビアとイタリア間で救助ボートを運航するドイツの人道支援組織シー・ウォッチが公開した。同乗していたメディア製作会社が撮影したという。
この救助隊員は、海の中で「腕をいっぱいに広げた、人形のような」赤ちゃんを発見したとメールで語っている。彼はマーティンと名乗り、苗字は明らかにしなかった。
「私は赤ちゃんの前腕をつかみ、まだ生きているかのように、その軽い身体を守ろうと、すぐに腕の中に抱き寄せた。小さな指と腕を宙に伸ばしていた。その明るく人懐っこいが、動かない瞳に、太陽の光が差し込んでいた」
3児の父親であり、音楽療法士を職業とするこの救助隊員は、「自分を慰め、この理解しがたい悲痛な瞬間を表現するために歌い始めた。6時間前にはこの子どもは生きていた」と述べた。
昨年、トルコの海岸に打ち上げられた3歳のシリア難民アイランちゃんの写真と同様に、この写真も2014年初頭から地中海で死亡した8000人以上の人々について、その苦しみを生々しく伝えるものとなった。
シー・ウォッチによると、イタリア海軍に直ちに引き渡されたこの赤ちゃんについての詳細は不明だという。救助隊員も一部服を着たままだった乳児が男か女かも確認することができなかった。また、赤ちゃんの父親や母親が生存者の中にいるかどうかも分かっていない。