最新記事

2016米大統領選

「トランプ大統領」の悪夢を有権者は本気で恐れろ

2016年5月26日(木)16時40分
アイザック・チョティナー(スレート誌記者)

Carlo Allegri-REUTERS

<世論調査でついにヒラリーに逆転したトランプ。偏見の塊のようなこの人物をアメリカの大統領にさせれば、取り返しのつかない惨事となる>

 ドナルド・トランプがついに支持率でヒラリー・クリントンより優位に立った。FOXニュースが先週発表した世論調査では、大統領選本選で2人が対決した場合、トランプの支持率は45%、クリントンは42%。先月の同調査ではクリントンが7ポイント差でリードしていたから、トランプはわずか1カ月で大逆転を果たしたことになる。

 ソーシャルメディアではさまざまなコメントが飛び交っている。いわく、「たった1回の調査結果で大騒ぎすることはない」(確かに)。「民主党幹部はすぐパニックになる」(そのとおり)。「選挙戦はこれからまだ何カ月も続く」(うんざりだが、そのとおりだ)。

 トランプは共和党の指名を事実上獲得済みだ。ヒラリーは執拗に食い下がるバーニー・サンダースに手を焼いているが、民主党の指名はほぼ確実で、指名後は支持率が上がるだろう。

 長い選挙戦(それも展開の読めないキワモノ芝居と化した選挙戦)の中のたった1回の世論調査で何が分かるというのか。

 答えは「何も」。今回の調査結果はトランプの支持拡大をあらためて印象付けただけ。出生疑惑でオバマ降ろしを図ったおバカなセレブが事実上の指名候補にのし上がり、前国務長官を脅かすほど支持率を伸ばしている。この不可解な状況に有権者はどう反応すべきか。答えはずばり「パニックになるべきだ」。

【参考記事】米共和党、トランプ降ろしの最終兵器

 偏見の塊がアメリカの大統領になろうとしているのだ。「冷静でいろ」と言うほうが無責任だろう。

「冷静でいろ」と言う人々が指摘するのは次の2点だ。第1に、トランプはそれほど危険な男ではない。過激なデマゴーグに見えるが、計算ずくで暴言を吐いているだけだ、と。

 百歩譲って人種差別やイスラム嫌い発言がトランプの本音ではないとしよう。だが人気取りのために自分の信条と異なる発言をする候補者を信用できるだろうか。これまでのトランプの戦いぶりを見れば、暴言がただの演出ではないのは明らかだ。女性蔑視はポーズではない。傍若無人なワンマンぶりも本性だ。

取り返しのつかない惨事

「冷静でいろ」派が指摘する第2の点は、トランプは本選では勝ち目が薄いということだ。

 いいだろう、トランプがクリントンを倒す確率は20%しかないとしよう。だが、それだけでもパニックになるには十分だ。

 想像してほしい。11月までにあなたの家族に恐ろしい災難が降り掛かる確率が20%あるとしたら? これから半年、あなたはのんきに暮らせるだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア・ウクライナ、二国間協議に前向き姿勢 実現な

ビジネス

米国株式市場=ダウ971ドル安、トランプ氏のFRB

ビジネス

NY外為市場=ドル3年ぶり安値、トランプ氏がFRB

ワールド

米ホワイトハウス、新国防長官探し開始との報道を否定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 2
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投稿した写真が「嫌な予感しかしない」と話題
  • 3
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ページを隠す「金箔の装飾」の意外な意味とは?
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 6
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 7
    「アメリカ湾」の次は...中国が激怒、Googleの「西フ…
  • 8
    なぜ? ケイティ・ペリーらの宇宙旅行に「でっち上…
  • 9
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 10
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中