最新記事

EU

ジョンソン前ロンドン市長のEU=ヒトラー発言、離脱派に逆効果か

2016年5月25日(水)10時11分


 ジョンソン氏は英紙サンデー・テレグラフとのインタビューで、2000年前のローマ帝国時代から「平和と繁栄の黄金時代」を築こうとしてきたあらゆる試みのように、EUは失敗する運命にあると発言。「ナポレオンやヒトラーなど、さまざまな人たちが試してきたが、悲劇に終わる」と語った。

民主主義の空白

 ジョンソン氏は「EUは異なる手法による試みの一つだが、欧州という概念に対する潜在的な忠誠心がないことが永遠の課題となっている。皆が尊敬し、理解できるような権威が存在せず、このように民主主義の大いなる空白が生じている」との持論を展開した。

 同氏はまた、2014年のロシアによるクリミア併合などをめぐり、同国のプーチン大統領ではなく、EUを非難。「EUのその場しのぎの外交政策立案や、自信を持って遂行した防衛政策が実際に問題を起こしている例が欲しいなら、ウクライナで起きたことを見るがいい」と、ジョンソン氏は9日の記者会見でこう述べている。

 チャーチルの伝記やローマ帝国に関する本の著者として、ジョンソン氏は、自分の好きな政治家が第2次世界大戦後に、ナショナリズムと戦争の時代に絶対に戻らないよう統合された欧州を熱烈に支持したことを知っているはずだ。

 帝国ゆえ、英国が実際にEUのような機関に参加することは想像していなかっただろうが、チャーチルは欧州評議会の生みの親である。欧州評議会の下、欧州人権条約やそれを適用する欧州人権裁判所が設立された。

 しかし現在、多くの保守党議員は、欧州人権条約を英国の裁判所に対する受け入れがたい主権侵害と考え、ベラルーシ以外のロシアを含む全ての欧州諸国が批准する同条約から脱退したがっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中