ジョンソン前ロンドン市長のEU=ヒトラー発言、離脱派に逆効果か
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5月22日、ロンドン前市長のボリス・ジョンソン氏(写真)のヒトラー発言は、英国のEU離脱の是非を問う来月の国民投票で、離脱派にとって裏目に出るかもしれない。写真は離脱キャンペーンに参加する同氏。英トゥルーロで11日撮影(2016年 ロイター/Darren Staples)
欧州連合(EU)たたきで名をはせたが、時に事実をゆがめるとの批判もあった元ジャーナリスト、ボリス・ジョンソン前ロンドン市長は、読者の気を引くにはヒトラーを引き合いに出すより簡単な方法はないことを知っている。
だが、力ずくで欧州大陸を支配しようとしたナチス・ドイツ総統やフランス皇帝ナポレオンの方法と関連付けて、EUの限られた、交渉による超国家的権力を批判しようとするジョンソン氏のやり方は政治的な危険に満ちている。
このようなやり方は第1に、ジョンソン氏が属する保守党の2人の英雄、チャーチル、サッチャーの元両首相の戦略的ビジョンを無視している。2人は統合された欧州を、ヒトラー主義への答えとして、また、何世紀にもわたる流血の時代を経て平和と安定を確かなものとする方法として考えていた。
ジョンソン氏は歴史をゆがめているだけではない。EUに加盟する民主主義国28カ国は、主権の一部を共有することに自由に同意しており、ジョンソン氏が現在英国に使うよう求めている自主脱退を可能とする条項さえ設けている。
ジョンソン氏のヒトラー発言は、英国のEU離脱の是非を問う6月23日の国民投票で、離脱派にとって裏目に出るかもしれない。さらには、キャメロン首相に取って代わるという同氏の野望を狂わす可能性もある。
EUに不信感を抱き、その行動が十分な民主的管理下にないと、多くの欧州市民のように感じている英国民でさえ、高圧的な独裁者やユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)などとEUを同一視はしないだろう。
最新の世論調査では、来月の国民投票で、保守党支持層の間で残留支持が増加傾向にあることが示されている。