東芝不正会計の本質は、「国策」原発事業の巨額損失隠し
監査法人まで巻き込んで第三者委員会スキームを「壮大な茶番」に貶めた東芝の罪
変わらぬ体質 先月、2019年までの中期計画を発表した東芝の室町正志社長 Thomas Peter-REUTERS
昨年、東芝の巨額の不正会計が発覚した。日本を代表する巨大企業のイメージは地に堕ち、回復困難なダメージを被った。
しかし東芝がこのような事態に追い込まれたのは、不正会計の中身だけが理由ではない。東芝経営陣が、問題の本質を隠ぺいしようとし、世の中に対してあまりに欺瞞的な対応をとったことが、存亡の危機に瀕する事態を招いた最大の原因である。
昨年7月、第三者委員会報告書が公表され、その翌日に、歴代3社長の辞任が公表された。新聞、テレビ等の多くのメディアは、「不正会計を主導した経営トップを厳しく断罪する第三者委員会報告書」を評価し、それによって「幕引き」の雰囲気が醸成された。
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しかし筆者は、その報告書の内容について、①会計不正の問題なのに、不正の認識の根拠となる監査法人による会計監査の問題が調査委嘱の対象外とされていること、②調査の対象が、「損失先送り」という損益計算書(P/L)に関するものに限られ、アメリカの原発子会社ウェスチングハウスの巨額の「のれん代」(編注:ブランドの資産価値を決算に計上すること)の償却の要否等、会社の実質的な財務基盤に関わる貸借対照表(B/S)項目が対象から除外されていること、などに重大な疑問があり、第三者委の調査は、意図的に問題の本質から目を背けようとしているとしか思えないと指摘してきた。
そして昨年11月に、誌面で内部告発を呼びかけるという異例の対応まで行って、東芝不正会計の徹底追及を続けていた日経ビジネスが、東芝が大半の株式を取得して子会社にしていたウェスチングハウスで、合計1600億円の巨額減損が発生していたことを報じた。2006年に同社を買収した際の東芝の目論見は、2011年の福島の原発事故の世界的影響で大きく外れていたが、東芝はそれまで、原子力事業については一貫して「順調だ」と説明してきた。そこに大きな偽りがあったことが明らかになった。
日経ビジネスのスクープ報道はさらに、第三者委発足前に、当時の田中久雄社長、室町正志会長(現社長)ら東芝執行部が、ウェスチングハウスの減損問題を、委員会への調査委嘱事項から外すことを画策し、その意向が、東芝の顧問法律事務所から、第三者委の委員に伝えられ、原発事業をめぐる問題が第三者委員会の調査対象から除外されたことを明らかにした。