潘基文の舌禍でこじれる西サハラ問題
うかつな発言で紛争再燃が懸念される事態に
遠のく解決 西サハラの片隅の「解放区」で祈るポリサリオ戦線の兵士 Louafi Larbi--Reuters
アフリカ北西部の西サハラ地域では、国連の潘基文(バン・キムン)事務総長の発言をきっかけに、モロッコ政府と国連のごたごたが続き、国連の平和維持活動(PKO)の継続が危ぶまれる状況になっている。PKOを継続できなければ、この地域で紛争が再燃し「全面戦争」に発展するおそれがあると、潘が警告していることが明らかになった。
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モロッコがこの地を「占領」
西サハラ地域はスペインが1975年に領有権を放棄。独立を求める先住民の武装組織「ポリサリオ戦戦」がアルジェリアの支援を受けて「サハラ・アラブ民主共和国」の樹立を宣言したが、モロッコもこの地域の領有権を主張し、現在はモロッコがほぼ全域を実効支配している。
潘は3月上旬、アルジェリアにある西サハラ難民キャンプを視察した際、モロッコがこの地域を「占領」していると発言。実効支配の正当性を主張するモロッコは潘に発言の撤回を求めたが、国連が応じなかったため国連西サハラ住民投票監視団(MINURSO)の要員の撤収を要求し、PKOへの拠出金の一部300万ドルの支払いを停止した。
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西サハラでのPKOには現在、約250人の軍事要員が参加。予算は5300万ドルに上る。国連の仲介により停戦が成立した91年、この地域の帰属について住民の意思を問う投票を実施するため、国連安全保障理事会の決議でMINURSOが設置された。その後住民投票の実施はずるずると先送りされ、MINURSOの任期は毎年1年ずつ延長されてきた。今年も4月30日には任期切れとなるため、それまでに安保理が延長の可否を決めるが、住民投票の実施へ進展が見られないことなどから現地では緊張が高まっている。