米政府の新たな税逃れ抑制策、外国企業も直撃か
税負担の少ない国や地域への本拠地移転を目的に行う企業買収を法的に規制
4月11日、米財務省は今週、税逃れを抑制するための新たな規則を発表。この中には米企業だけでなく、外国企業も方針変更を迫られかねない内容が含まれている。写真はオバマ米大統領。イリノイ州で7日撮影(2016年 ロイター/Jim Young)
米財務省は今週、税負担の少ない国や地域への本拠地移転を目的に行う企業買収(インバージョン)を抑制するための新たな規則を発表した。この中には米国企業だけでなく、外国企業も方針変更を迫られかねない内容が含まれている。
外国企業にとって問題となるのは、企業グループ内の貸借取引に関する規則。それによると、ある企業の米国子会社が海外の親会社から借り入れをした場合、3年以内に配当支払い、ないしは親会社の株式購入という形で海外に資金を移転させれば、米税務当局からその借り入れは債務ではなく資本とみなされる。つまり、債務における利子が米国の所得税から控除されなくなる。
この規則の狙いは、本拠地を移した米企業がグループ内の資金の貸借取引を利用して米国内から海外に実質的に利益を移転させるのを防ぐことだ。ただ、同じような手法で米国における税負担を軽減している欧州企業も、今後大きな影響を受ける可能性がある。
専門家は、欧州企業はグループ内の債務を通じて利益を米国外に移転し続けることは可能だが、これまでよりもずっと長い期間をかけて実施する必要が出てくるかもしれないとの見方を示した。
ハーバード大学のスティーブン・シェイ教授(法学)は「ルールの枠組みを大きく変えるのは間違いない」と述べた。
シェイ氏は、取得した米子会社に目いっぱい親会社から借金をさせていた従来のようにはいかなくなると予想。もっとも実際にどの程度制限されるかはわからないとも話した。
一方で外国企業の米子会社の団体である国際投資機構(OII)のナンシー・マクラーノン理事長は、外国企業が米国で子会社に借金をさせて恒常的に利益を海外に移転していることはないと言明。「(米当局は)いったい何の問題を解決しようとしているのか」と疑問を呈した。