米政府の新たな税逃れ抑制策、外国企業も直撃か
その上でマクラーノン氏は、問題の複雑さや内国歳入庁(IRS)が具体的に新たな権限をどう行使するかが不透明なことで、米国のプロジェクト案件に投資する魅力が薄れると指摘し、「米国への外国直接投資を冷え込ませる」と警告した。
多額の逸失税収
米財務省は、新規則が念頭に置いているのはインバージョンや外国企業の買収直後に配当を支払うための資金調達を目的として実施された大規模な借り入れであり、米国子会社でより幅広く行われているような借り入れではないと説明している。
財務省が先週示したファクトシートには「提案した規制は、工場建設や設備導入といった実際の事業投資のためのグループ内借り入れには一般的には適用されない」と記された。
各企業は通常、グループ内の資金の貸し借りについて詳細は公表しないため、こうした取引を通じて外国企業が米国で稼いだ利益に対する課税をどの程度逃れたか具体的な数字で把握することはできない。
それでもシティ大学ロンドンのリチャード・マーフィー教授(国際政治経済問題)は、IRSの毎年の逸失している税収額が数百億ドルに上ると推定している。
グループ内借り入れで米国における課税負担を減らした企業としては、製薬のグラクソ・スミスクラインや教育事業のピアソン、電力・ガスのスコティッシュ・パワー、通信のボーダフォンなどが挙げられる。
ただこうした企業はいずれも既に子会社の借り入れを解消し、米国のあらゆる税法を守っているとしている。借り入れの実態については、データ流出や税務当局による法的措置によって明るみになっていた。
2013年のロイターの調査では、欧州最大手ソフトウエアのSAPが、法人税率が最低35%の米国で稼いだ利益を税率12.5%のアイルランドに移転させた具体的な手法が判明している。
(Tom Bergin記者)