【再録】ウィル・アイ・アム「犯罪と暴力を歌ったことがないのが誇り」
多方面で活躍するヒップホップ界の大物Will.i.amが語った「音楽とマイケルと政治とテクノロジー」(2011年取材より)
音楽も政治もテクノロジーも 人気ヒップホップグループ「ブラック・アイド・ピーズ」メンバーであり、ソロでも活躍するウィル・アイ・アム(Will.i.am)。スーパーボウルのハーフタイムショーを控えた2011年初頭にインタビューした。ウィル・アイ・アムは政治やテクノロジーへの関心も高い(2015年撮影) Steve Marcus-REUTERS
ニューズウィーク日本版 創刊30周年 ウェブ特別企画
1986年に創刊した「ニューズウィーク日本版」はこれまで、政治、経済から映画、アート、スポーツまで、さまざまな人物に話を聞いてきました。このたび創刊30周年の特別企画として、過去に掲載したインタビュー記事の中から厳選した8本を再録します(貴重な取材を勝ち取った記者の回顧録もいくつか掲載)。 ※記事中の肩書はすべて当時のもの。
[インタビューの初出: 2011年1月19日号]
2月に行われる全米最大のスポーツイベント、NFL(全米プロフットボールリーグ)スーパーボウルのハーフタイムショーに乗り込む、ヒップホップグループ「ブラック・アイド・ピーズ」。ソロでも活躍の場を広げるメンバーのウィル・アイ・アム(35)に、音楽ジャーナリストのロレーン・アリが聞いた。
――米大統領就任記念ライブ、サッカーのワールドカップ開幕コンサートときて、ついにスーパーボウルだ。
スーパーボウルは格が違う。国民の祝日だ! それにうちの家族はフットボールの大ファンなんだ。おじがロサンゼルス・ラムズ(現セントルイス・ラムズ)でプレーしていた。ついに家族の中からスーパーボウルの「出場者」が出るわけさ。
──自分をセレブだと思う?
頼むから俺のことをそう呼ばないでくれ(笑)。最近のセレブの大半は、セレブの名に値することをしていない。それだけでも俺はセレブになりたくない。音楽に情熱を傾けている1人の男で、俺の曲にみんなが引き寄せられる、それでいい。
――あなたは超大物のプロデュースも数多く手掛けている。ボノみたいな人に、「音程が外れている」とか言える?
スタジオに入る前はパニックだ。「M・J(マイケル・ジャクソン)とアイルランドで1週間も一緒なんて!」。でも、いざとなったら責任を持ってやる。謙虚さも必要だ。「俺の力を借りたいんだろう?」なんて付け上がってはダメだ。
【参考記事】訃報、マイケル・ジャクソン
【参考記事】神になったマイケル・ジャクソン
――あなたがマイケル・ジャクソンと手掛けた曲は、先日発売されたマイケルのアルバムに収録されていない。機会があればリリースしたいか。
彼と3年間やって、発表したのは『スリラー25周年記念リミテッド・エディション』のリミックスだけ。一緒に録音したほかの曲は、もう出すべきじゃない。彼の賛成なしで出すのは良くない。彼は完璧主義だった。
――ブラック・アイド・ピーズの新しいアルバムは『ザ・ビギニング』。前作は『ジ・エンド』。順番が逆では?
終わりがあれば、必ず新しい始まりがある。
――何が終わったのか。
レコード産業の在り方すべて。今はまったく新しいテクノロジーの時代が始まっている。