最新記事

企業

「カリスマ」鈴木会長退任で揺れるセブンHD、新体制の方向見えず

「長老支配」を否定した取締役を評価する声の一方で、強力な後継者を欠く同社の今後に不安視も

2016年4月10日(日)13時47分

4月8日、「カリスマ経営者」だったセブン&アイ・ホールディングス の鈴木敏文会長兼CEO(写真左)が7日発表した突然の退任で、同社の先行きに不安が広がっている。7日撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

  企業統治の模範例か、お家騒動悪化の予兆か──。「カリスマ経営者」だったセブン&アイ・ホールディングス <3382.T>の鈴木敏文会長兼CEO(最高経営責任者)が7日発表した突然の退任で、同社の先行きに不安が広がっている。

 同会長の人事提案を否決した取締役の採決には、企業ガバナンスが機能したとの評価も聞かれる。同時に、「長老支配」を引きずる同社の古い体質も浮き彫りになり、今後の経営立て直しを遅らせるとの懸念もでている。

 鈴木会長の退任表明から一夜明けた8日、セブンの株価は前日比で上昇して終わったが、強力な後継者候補を欠く同社の経営展開に波乱を予想する声は少なくない。

ガバナンス面からは一定の評価

   日本の小売業を大きく変えたコンビニエンスストアの台頭。業界をけん引してきたセブンイレブン・ジャパンの成長の歴史をひも解くと、現在83歳の鈴木会長の先見性を示す逸話がいくつもある。

 今では主力商品となっているおにぎりや弁当を店で販売するという決断は有名な話。最近では「もっと美味しい食パンを作ろう」という会長の一声で開発した「金の食パン」が大ヒット商品となったことも広く知られている。

 しかし、成長を謳歌してきたセブンイレブンで、今年3月末から井阪隆一社長の交代をめぐる混乱が続いた。

 これまでなら鈴木会長の「鶴の一声」で決まるはずの人事だが、人事案を検討した指名委員会での社外取締役の反対、取締役会では社内取締役からの反対票も出て、鈴木会長は自ら主導した案を実現できなかった。

 野村証券シニアストラテジストの西山賢吾氏(訂正)は「日本のガバナンスが良い方向に変わってきた。上場企業と非上場とは決定的に違う」と述べ、上場企業ならば当然起こりうることとの見方を示す。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル首相「レバノン停戦を確実に履行」、安保閣

ワールド

カナダ首相、米関税巡り州と協議へ トランプ氏主張に

ビジネス

米ベスト・バイ、通期業績予想引き下げ 家電需要の低

ワールド

トランプ関税、インフレを悪化させ雇用を奪う=メキシ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    こんなアナーキーな都市は中国にしかないと断言できる!?──重慶市の通勤風景がtiktokerに大ヒット
  • 4
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 5
    放置竹林から建材へ──竹が拓く新しい建築の可能性...…
  • 6
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 7
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 8
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中