新興市場の回復阻む「3つの不透明要因」
中国の景気減速、そしてブラジル、トルコ、南アなどの政治的リスクも高まる一方
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3月30日、これまで数年間にわたった低迷期を経て、新興国市場には割安感が出始めており、世界の投資家の間では、新興国資産への回帰の動きも見られる。写真は株価ボードを見入る男性。北京で1月撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
これまで数年間にわたった低迷期を経て、新興国市場には割安感が出始めており、世界の投資家の間では、新興国資産への回帰の動きも見られる。しかし、不透明感が残るなか、資金の戻りは鈍い。
国際金融協会(IIF)のデータによると、外国人投資家は今年3月、新興国の株式と債券におよそ368億ドルを投じ、流入額はこの約2年間で最高を記録。過去4年間の月間の平均水準を大幅に上回った。
ただし、2015年の新興国からの資金流出額が約7300億ドルに達したことを踏まえると、新興市場への資金の戻りはごく緩やかだ。
新興国投資の本格回復には、3つの不透明要因の払拭が必要だ。
その3つの要因とは、まず、米利上げとそれに伴うドル上昇への警戒感。そして、中国の景気減速、およびその影響がコモディティー(商品)価格や新興市場全体に波及する可能性。最後に、ブラジルやトルコ、南アフリカなど多くの国で起きている政治的なリスクの高まりだ。
最初の2要因については、今のところどちらも解消されていない。
たとえば米利上げだが、米連邦準備理事会(FRB)は昨年12月の利上げ後、追加利上げ実施をためらっているが、最近は一部のFRB当局者がタカ派的な姿勢を示しており、市場を再び動揺させかねない。
JPモルガンのストラテジストらは、新興市場が向こう3カ月、アウトパフォームすると見ている。ただ、経済情勢は改善しない見通しであり、新興市場の回復は主にポジション調整によるもの、としている。
「新興市場から距離置いている」
「中国リスク」も無視できない。中国は無秩序な人民元下落の可能性を否定するが、投資家は中国市場について確信を持てないでいる。