新興市場の回復阻む「3つの不透明要因」
ピクテのウェルスマネジメント部門でアセットアロケーションを担当するクリストフ・ドナイ氏は、中国は当面は現状を維持するかもしれないが、今後3年以内に「ミンスキー・モーメント(信用や通貨への圧力の結果、資産価格が急落すること)」が起こるリスクは高いと指摘。
「そのため、当社では、新興市場資産からは距離を置いている。われわれの新興市場へのエクスポージャーは極めて限定的だ」と語った。
ただでさえ国際的な環境への疑念が強いなか、政治リスクを抱える新興市場に投資するというのは、蛮勇以外の何物でもない。
政治リスクの代表格が、リセッション(景気後退)に陥っているブラジルだ。国営石油会社ペトロブラスをめぐる汚職捜査が拡大するなか、ルセフ大統領は弾劾に直面する。政権交代への期待感から市場は上昇したが、混乱の決着にはまだ、数週間、数カ月かかる可能性がある。
トルコでも、シリアの内戦とそれに伴う難民流入、独立を目指すクルド人との対立、メディア規制、ロシアとの関係悪化に苦慮している。
ゴールドマン・サックスの新興市場リサーチ担当マネジングディレクター、カマクシャ・トリベディ氏は「新興市場では先行き、政治が大きな役割を占める」と指摘。「政治という要因は、経済成長が加速し信用も潤沢な時期には軽視されがちだが、成長が低迷し信用が引き締まっているような局面においては、重要性が増す」との見方を示している。
(Mike Dolan記者 翻訳:吉川彩 編集:内田慎一)
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