【再録】現代史上、最も名高い2人の新旧米国務長官
クリントン ヘンリーの発言に付け加えるとすれば、緊急課題と重要課題を見極めるとともに、今は緊急でも重要でもない問題が来年や再来年にはそうなることもあり得る以上、長期的傾向にも目を向けなければならない。そのためには、別種のスキルが必要だ。
私は常に国務省のスタッフにこう確認している。「エネルギー保障やエネルギー自給の問題はどうするの? EU(欧州連合)がエネルギー需要に関して共通政策を構築できるよう、ヨーロッパにどう働き掛ける? 食料安全保障の問題は?」と。
08年には(穀物価格高騰で)各地で暴動が発生した。気候変動が起こり、人口移動のパターンも変化している。食料問題の重要度は今後さらに高くなる。新型インフルエンザの脅威で、世界の医療問題と併せてパンデミック(世界的流行病)にどう対処するかも課題になっている。
アメリカ政府は最近、北極圏に注目し始めている。海氷や氷河の融解が進みシーレーン(海上交通路)が変化している北極海は、5つの国と接している。(その1つである)ロシアは10年に北極遠征を行って北極点に国旗を立てると言うが、カナダは「そんなことはするな」と反対している。北極圏問題は大いに関心を持つべき分野だが、今のところ記者会見やホワイトハウスの議題になっていない。
つまり各種の問題が絡み合っているということだ。緊急課題と重要課題と長期的課題がある。
「オバマ大統領とは毎週2人だけで話をしている」――クリントン
――国務長官と大統領の関係はどれほど重要なのか。
クリントン 極めて重要だと考えている。政策を立案し、重大な決断を下す際にアドバイスを提供し、政策決定に外交や発展という要素を反映させるには大統領との良好な関係が欠かせない。
ヘンリーも含めて私が話をしたことがある歴代の国務長官も同じ意見だと思うが、この立場にある者は多くの時間と労力を注ぎ込んで大統領との関係を築き上げなければならない。
私はジェームズ・ジョーンズ(国家安全保障問題担当大統領補佐官)だけでなく、ロバート・ゲーツ(国防長官)とも緊密に協力している。だが結局のところ、最終的な決定権を持つのは大統領だ。難しい決断が行われる場所は大統領執務室にほかならない。
大統領執務室に乗り込んで「私はこうすべきだと思います」と主張するようなやり方は通じない。よく考えて努力を重ねなければ。(バラク・オバマ)大統領とは週1回、2人で話をするし、安全保障担当チームの会合でも顔を合わせる。意思疎通は欠かさない。