最新記事

ニュースデータ

日本は世界一「夫が家事をしない」国

2016年3月1日(火)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

 日本の男性の家事・育児時間が短いのは、仕事の時間が長いからだ。男性の週当たりの平均勤務時間は47.8時間(女性は20.2時間)。冒頭でも述べたが、日本は男女の役割差が大きい「男は仕事、女は家庭」の社会だ。その傾向は世界のどの国にも見られるが、国によってレベルは異なっている。

 子育て期の男女の役割差を可視化してみよう。横軸に仕事の時間、縦軸に家事・家族ケアの時間をとった座標上に、主要国の男女のドットを配置し、線でつないだグラフをつくってみた。<図2>を見て欲しい。

maita160301-chart02.jpg

 勤務時間が長い男性が右下、家事時間が長い女性が左上にあるのは、どの国も同じだ。しかし、男女間の距離(乖離)は国によって異なる。各国の男女の役割差は線分の長さで示され、日本(図表の赤い線)が最も長い。主要国だけでなく、33カ国全体で見てもそうだ。スウェーデン(青い線)は、男女の役割差が小さい。

【参考記事】日本人の知的好奇心は20歳ですでに老いている

 現在日本では、女性の社会進出がさかんに奨励されている。しかしそのためには男性の家庭進出が必要であることがわかる。男女双方の取り組みによってドットが均等線(仕事=家事・育児)付近に収束することが理想だ。それが「ワーク・ライフ・バランス」の実現につながる。現状ではスウェーデンがその状態に最も近く、日本が最も遠い。

 男女の家事分担率から見れば、日本は世界でも極めて特異な社会だ。その現実を直視することが、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた第一歩となるだろう。

<資料:ISSP「Family and Changing Gender Roles IV」(2012年)

≪筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中