最新記事

子供

ISISの支配下には31,000人以上の妊婦がいる

生まれたそのときから聖戦士になるべく洗脳され訓練される運命を赤ん坊たちに担わせてはならない

2016年3月8日(火)19時10分
ジャック・ムーア

心身に傷を負って ISISが公開した動画に登場した子供たち Quillium Foundation

 イラクおよびシリアのISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)支配地域で暮らす子供に関する最新の報告書で、ISISが樹立を宣言した自称「イスラム国」には3万1,000人以上の妊婦がいることがわかった。

 この数字は、イギリスを拠点に過激派に対抗する活動を行うシンクタンク、クイリアムが、3月7日に公開した報告書「ISISの子供たち」のなかで明らかにしたもの。ISIS支配下で暮らす妊婦の推定人数は、クイリアム代表のノーマン・ベノトマンが、ある諜報機関部員から得た情報だ。

「『イスラム国』で3万1,000人の女性が妊娠しているという事実は、非常に気がかりだ」とクイリアムの上級研究員、キニタ・マリクは言う。「国際社会はこうした子供を救うために一刻も早く手を打たなければならない」

子供たちは最強の殺人兵器になる

 この報告書では、ISIS支配下の子供たちのなかにはイギリス出身の子供が50人以上いることや、子供たちがISISの厳格なカリキュラムを教え込まれていて、絵を描いたり哲学を学んだりすることは禁じられていることなどが紹介されている。若者たちは、「ジハーディスト訓練」キャンプに参加する前にコーランの詩を暗唱させられている。

「カリフの真珠」と呼ばれる少女たちは、ISISの学校には立ち入ることができず、家に押し込められて、夫の世話をするように幼いころから教えられる。ISIS支配下で暮らす子供たちの多くは誘拐されたか、脅されて連れてこられた者たちだ。そして、小さいうちから過激主義の価値観を植えつけられ、ISISの信念を広めるように教えられる。

【参考記事】息子をISISの自爆テロに差し出すブラックな父

 この報告書によると、現役のISIS戦闘員たちはこうして育つ子供たちを「自分たちよりも優れた殺人兵器になる」と期待し、ジハードの将来は明るいと考えている。ISISの教育制度は「次世代のムジャヒディン(イスラム聖戦士)の心」を作るためのものだ。子供たちは激しい暴力に鈍感になり、精神と肉体の両面で傷つくことになる。

【参考記事】ISIS支配下で民間人犠牲者1万9000人の地獄、国連報告書

「これは地球上で最も憂慮すべき事態のひとつだ」と、クイリアムのベノトマン代表は言う。「子供たちは未来へのカギを握っている。ISISでの洗脳は生まれたときから始まり、学校や訓練キャンプで一層強化される。子供たちは、異端の解釈を施されたシャリーア(イスラム法)を教え込まれ、暴力に対する感覚は鈍化し、ジハードの大義を担うために必要な技能を習得することになる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中