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2016米大統領選

【動画】大統領選のゲスな「ネガティブCM」、黒幕は誰だ?

2016年3月14日(月)16時05分
小暮聡子(ニューヨーク支局)

 例えば、反トランプCMを製作したスーパーPACの「American Future Fund Political Action」は、反トランプを掲げてはいるものの、特定の候補者への支持は公表していない。ただ、調査報道機関Open Secretsによれば、これまでに共和党の複数の候補者についてネガティブ広告を作っていながらマルコ・ルビオ上院議員だけは攻撃していないことから、現在はルビオの非公式サポーターだと見られている。この反トランプCMは3月15日のフロリダ州予備選を前に同州で放映が開始されていて、フロリダはルビオが地元議員として勝負をかける決戦の地だ。

【参考記事】トランプとの「お下劣舌戦」で撃沈したルビオ

 今年の大統領選でも、スーパーPACが黒幕となって仕掛けるネガティブキャンペーンは過熱の一途をたどるだろう。PACが「スーパー」になって初めての大統領選となった2012年には、1000以上のスーパーPACが民主・共和の両陣営に合計約6億2900万ドルを投入したとされる。この巨額の資金のほとんどがライバル候補に対する誹謗中傷広告に使われた。

 また、こうしたネガティブキャンペーンで潤うのが(特に激戦州の)テレビ局であることは言うまでもない。テレビ映えするトランプは視聴率男であるだけでなく、トランプ降ろしのためのCM放映料まで稼いできてくれる。トランプを批判する手前、大きな声では言えないだろうが、トランプ旋風が吹き荒れれば荒れるほどテレビ局が儲かるという不都合な真実がある。

 もちろん、「みんな私のことが大好きだ」というのが口癖のトランプが自分への攻撃を黙って見ているはずはない。トランプ陣営はスーパーPACではなく自分たち自身でルビオ批判のテレビCMを製作し、反トランプCMが狙いを定めるフロリダ州でほぼ時を同じくして流し始めた。

「Corrupt Marco(腐敗したマルコ)」と題されたこのCMでは、ナレーションがルビオのことを「口先だけで行動しない、腐敗した政治家」と呼ぶ。同じ党内でこれだけ辛辣な誹謗中傷合戦が繰り広げられるのも、自由の国アメリカならではだろう。

 ちなみにだが、今シーズンで一番センスが光る中傷CMを選べと言われれば、民主党のヒラリー・クリントンを攻撃しているこちらの作品を推したい。

反クリントンCM「It Feels Good to Be a Clinton」(2月12日公開)

 軽快なラップをBGMに、黒いパンツスーツ姿のクリントン(に見せかけた女性)がコンピューターをボッコボコに破壊する。クリントンが国務長官時代、公務に私的な電子メールアカウントを使用し、さらに私用サーバーから電子メールのデータがすべて削除されていたことから「隠蔽疑惑」を追及された問題を想起させる映像だ。なおこのCMは、99年のコメディー映画『リストラ・マン』でサラリーマンたちがFAXマシーンを破壊するシーンのパロディーだそうだ。

 これまた品格に欠けるCMだが、製作したのは共和党候補者選びで2番手につけているテッド・クルーズ上院議員の選挙陣営。暴言王トランプでなくともこんな公式CMを武器に大統領を目指すのだから、アメリカはやっぱり自由の国だ。

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