「ホームレス」を生み出さない社会を目指して
[川口加奈]NPO法人Homedoor 理事長
対症療法でなく問題を根本から解決する
「ホームレス」というと、多くの人が自分とは関係のないこと、他人事だと考えるのではないでしょうか。
でも失業したり、病気やけがで働けなくなると、貯金を取り崩すことになり、家族や住まいにまで影響が及びます。結果として居場所を失い、路上生活に追い込まれる人は意外に多いのです。ホームレス状態は誰にとっても無縁ではなく、どんな人でもなり得るということです。
生命の危険にさらされる過酷な路上生活
ホームレスの人の多くは収入を得るため、廃品回収の仕事をしています。大阪の相場では、アルミ缶は1kgあたり80~130円、段ボールは1kgあたり8~10円で業者に買い取ってもらい、1日平均800~1000円の収入を得ます。
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栄養状態、衛生状態は悪く、過酷な路上生活で凍死や餓死、自殺をする人もいます。また、心ない人からいたずらされたり、場合によると命の危機にさらされるような襲撃を受けることもあります。
寒さや恐怖を取り除くためにお酒を飲み、昼間に仮眠を取ったりもするので、そうした姿を見て「怠け者だ」「ホームレスになるのは自業自得だ」という誤解を持つ人も少なくありません。しかし、こんな過酷な生活ですから、誰も好き好んで路上生活を始めるわけではないのです。
一方で、一度ホームレスになってしまうと、なかなか抜け出すことができません。住所がないので就職活動は困難を極めます。生活保護を受ければ居宅生活はできるものの、負い目や孤独感から3割近くの人が再び路上生活へ戻ってしまいます。身体的・知的・精神的障がいを抱える人、過酷な路上生活で障がいをより深刻化させる人、障がい者手帳を取得できるかどうかのボーダーラインにいる人など、自分で助けを求めることができない人も多くいます。
「出口作り」「入口封じ」「啓発」の3本柱
私が理事長を務めるNPO法人「Homedoor(ホームドア)」では「ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造を作る」というビジョンを掲げて、大きく3つの支援を行っています。
①出口作り
②入口封じ
③啓発活動
①の出口作りというのは、ホームレス状態から脱出したいと思った人に就労支援をすることです。例えばホームレスの人々が修理した自転車を一般にレンタルするシェアサイクルシステム「HUBchari(ハブチャリ)」、寄付された不要なビニール傘をホームレスの方や生活保護受給者がリメイクして販売する「HUBgasa(ハブガサ)」といった事業を通じて、中間的就労の場を用意しています。