最新記事

インド

デモや暴動広がり、モディ首相の指導力に疑問符

総選挙での圧勝から2年、決断力あるリーダー像は崩れつつある

2016年2月25日(木)10時53分

2月24日、大規模抗議デモや暴動が相次ぎ、インド各地に混乱が広がる中、同国のモディ首相は「沈黙は金」とばかりにだんまりを決め込んでいる。写真はニューデリーで1月撮影(2016年 ロイター/Adnan Abidi)

 学生逮捕に対する大規模抗議デモや、身分制度に絡む北部ハリアナ州での暴動が相次ぎ、インド各地に混乱が広がる中、同国のモディ首相(65)は「沈黙は金」とばかりにだんまりを決め込んでいる。

 与党・インド人民党(BJP)のある幹部は「彼(首相)は職務にまい進する真剣な政治家というイメージが人気の源泉だと考え、逐一これを説明する必要はないと思っている」と話す。

 別のブレーンは、今週開会する国会では予算審議を控えて対決ムードが強まり、首相の野心的な経済改革が一段と停滞しかねないため、最近の暴動については抑制した説明に終始するだろうと語った。

 モディ氏率いるBJPが、寡黙なシン前首相率いる国民会議派に圧勝した2014年5月の総選挙での、決断力あるリーダー像は崩れつつある。

 米カーネギー・エンダウメント国際平和研究所のアソシエイト、Milan Vaishnav氏は、首相の指導力に疑問が生じていると指摘。「モディ氏は決断が速いCEO(最高経営責任者)タイプの指導者だと思っていたが、必ずしも有能な為政者ではないかもしれない。その兆しが表れているとしたら問題だ、とすでに囁かれ始めている」と述べた。

 インドではここ数週間、政府を批判する集会を首都ニューデリーで開いた学生グループの指導者が逮捕されたことに対し、各地で数千人規模の大学生が抗議運動を繰り広げている。

 北部ハリアナ州では伝統的身分制度「カースト」での「ジャット」と呼ばれる多数派集団による暴動が起きた。被差別層に割り当てられる公職などの優先配分の拡大を求めて起こした抗議運動の参加者が暴徒化し、道路や線路を封鎖したほか、水の処理施設を占拠、デリーへの水の供給が遮断される事態となり、暴動鎮圧のため軍も出動した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中