欧州銀、石油企業向け融資で損失発生の懸念
融資の焦げ付きで最大180億ドルの損失を被る恐れも
2月17日、欧州の銀行は、原油が最高値を更新していたときに高リスクのプロジェクトに大量の融資を行った。しかし油価急落で銀行は最大180億ドルの損失を被る恐れもある。写真はパリ金融中心区。11日撮影(2016年 ロイター/Christian Hartmann)
欧州の銀行は、原油が最高値を更新していたときに高リスクのプロジェクトに大量の融資を行った。しかし油価急落で石油会社の経営はひっ迫。銀行は融資の焦げ付きで最大180億ドルの損失を被る恐れもあり、投資家の間で懸念が高まっている。
原油高の際にはING、HSBC、ドイツ銀行など大手行が融資を競っただけに、痛みは金融市場全体に広がっている。
シティグループやバンク・オブ・アメリカなどエネルギー業界向けのエクスポージャーが大きい米金融大手は既に巨額の引当金計上を発表しているが、こうした問題は北米に限らないようだ。
SYZアセット・マネジメントのファンドマネジャー、マイケル・ペドロニ氏は「投資家の懸念の矛先は欧州に転じた」と話す。その上で、痛みを伴う問題だろうが、まだ見通しは限られるものの乗り切り可能に見受けられるとした。
欧州の銀行は既にマイナス金利などほかにも不安材料を抱えており、投資家は大規模な融資の返済期限を注視している。原油は価格低迷が続き、石油会社の信用力も悪化する恐れがある。
BNPパリバのストラテジストによると、欧州の銀行のエネルギーセクター向け融資は総額4000億ユーロ(4450億ドル)。このうち20%が高利回り融資で、債務不履行により60億ユーロの損失が発生しかねない。
債務保証コスト上昇のため銀行はローン債権で減損処理を余儀なくされ、貸倒引当金を積み増す可能性もあるという。
欧州の銀行株指数は年初来で20%下落し、市場全体の2倍の落ち込みとなっている。
モルガン・スタンレーは欧州の銀行株の下落について「エネルギーとコモディティの組み合わせによるリスクを反映している」と分析。原油安で自己資本比率が175ベーシスポイント(bp)低下する恐れがある金融機関としてスタンダード・チャータード、DNB、クレディ・アグリコル、ナティクシス、ING、ABNを挙げた。
原油安で低インフレへの懸念が強まり、欧州中央銀行(ECB)が利下げに動いたため、銀行の利幅は一層圧迫されている。