最新記事

ヨーロッパ経済

欧州銀、石油企業向け融資で損失発生の懸念

融資の焦げ付きで最大180億ドルの損失を被る恐れも

2016年2月18日(木)18時20分

2月17日、欧州の銀行は、原油が最高値を更新していたときに高リスクのプロジェクトに大量の融資を行った。しかし油価急落で銀行は最大180億ドルの損失を被る恐れもある。写真はパリ金融中心区。11日撮影(2016年 ロイター/Christian Hartmann)

 欧州の銀行は、原油が最高値を更新していたときに高リスクのプロジェクトに大量の融資を行った。しかし油価急落で石油会社の経営はひっ迫。銀行は融資の焦げ付きで最大180億ドルの損失を被る恐れもあり、投資家の間で懸念が高まっている。

 原油高の際にはING、HSBC、ドイツ銀行など大手行が融資を競っただけに、痛みは金融市場全体に広がっている。

 シティグループやバンク・オブ・アメリカなどエネルギー業界向けのエクスポージャーが大きい米金融大手は既に巨額の引当金計上を発表しているが、こうした問題は北米に限らないようだ。

 SYZアセット・マネジメントのファンドマネジャー、マイケル・ペドロニ氏は「投資家の懸念の矛先は欧州に転じた」と話す。その上で、痛みを伴う問題だろうが、まだ見通しは限られるものの乗り切り可能に見受けられるとした。

 欧州の銀行は既にマイナス金利などほかにも不安材料を抱えており、投資家は大規模な融資の返済期限を注視している。原油は価格低迷が続き、石油会社の信用力も悪化する恐れがある。

 BNPパリバのストラテジストによると、欧州の銀行のエネルギーセクター向け融資は総額4000億ユーロ(4450億ドル)。このうち20%が高利回り融資で、債務不履行により60億ユーロの損失が発生しかねない。

 債務保証コスト上昇のため銀行はローン債権で減損処理を余儀なくされ、貸倒引当金を積み増す可能性もあるという。

 欧州の銀行株指数は年初来で20%下落し、市場全体の2倍の落ち込みとなっている。

 モルガン・スタンレーは欧州の銀行株の下落について「エネルギーとコモディティの組み合わせによるリスクを反映している」と分析。原油安で自己資本比率が175ベーシスポイント(bp)低下する恐れがある金融機関としてスタンダード・チャータード、DNB、クレディ・アグリコル、ナティクシス、ING、ABNを挙げた。

 原油安で低インフレへの懸念が強まり、欧州中央銀行(ECB)が利下げに動いたため、銀行の利幅は一層圧迫されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 5
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中