最新記事

ファシズム

ポーランド誌表紙にウェブ騒然、「欧州をレイプするイスラム」

難民危機で排外主義を強める欧州に現われたファシズムの亡霊

2016年2月18日(木)17時00分
ジョシュ・ロウ

恐怖に駆られて ポーランド中部の都市ウージでは右派が反イスラムデモに集結 Marcin Stepien/Agencja Gazeta--Reuters

 ファシズムの宣伝ポスターそっくりだ──ポーランドの保守系週刊誌の衝撃的な表紙がソーシャルメディアで轟々たる非難を浴びている。

 問題になったのは、有力誌wSieci(「ネットワーク」の意味)の最新号。同誌は今週「欧州をレイプするイスラム」という特集を組み、排外主義むきだしの表紙を使った。EU旗のドレスを着た金髪女性がアラブ系とみられる浅黒い男たちにレイプされそうになり悲鳴を上げている図だ。

 ツイッターのユーザーがこの表紙にムッソリーニ時代のイタリアの宣伝ポスターを対置し、図柄が酷似していると指摘した。

「左はポーランドの雑誌(2016年)、右はファシスト政権時代のイタリアのポスター(1943年)」

 さらに、ナチスの宣伝ポスター(下の写真の右上)にも似ていると、他のユーザーが指摘した。

「この図柄は長い間、植民地支配のプロパガンダに利用されていた。『欧州をレイプするイスラム』はそこから着想を得たものだ」

 wSieci誌はこの特集について、「メディアとEU官僚の隠蔽工作でEU市民に知らされていない実情」に切り込む総力特集と紹介している。その1つ「ヨーロッパ・地獄の惨状」という記事ではポーランド人記者アレクサンドラ・リュビンスカが、「寛大さと政治的公正」という美辞麗句の陰で、難民の大量流入がもたらした悲惨な状況が無視されていると論じている。

【参考記事】難民の子供の水死、2カ月で90人

 ソーシャルメディアでの批判について、同誌にコメントを求めたが今のところ回答はない。

 ポーランド政府は今週、チェコ、ハンガリー、スロバキア政府と協議し、バルカン諸国がギリシャとの国境にフェンスを設置する作業を支援すると発表した。ポーランドなど中部ヨーロッパの4カ国に流入する難民はまださほど多くないが、中東と北アフリカからギリシャ経由でヨーロッパに入る難民の流入が止まらず、ドイツが受け入れを制限した場合、自分たちの国にも難民が殺到すると警戒感を募らせている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦協議、進展なく終了 人質巡りハマスに柔軟性

ワールド

輸入医薬品に関税、「さほど遠くない」将来に トラン

ワールド

習主席がベトナム訪問、45件の協定に調印 供給網・

ビジネス

短期インフレ期待、23年10月以来の高水準に=NY
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトランプ関税ではなく、習近平の「失策」
  • 3
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由
  • 4
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    シャーロット王女と「親友」の絶妙な距離感が話題に.…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    米ステルス戦闘機とロシア軍用機2機が「超近接飛行」…
  • 10
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中