英国のバンカーが陥るストレス地獄
銀行内のカウンセラー設置、メンタルヘルスの「応急処置」コース、トレーダーのためのヨガレッスンや、さらに包括的に精神面をケアするプランなどが設けられている。
HSBCは、ストレスに関連する病気を減らすため、数多くのイニシアチブを取っているとし、「全行員とその家族に対する包括的なメンタルヘルスの福利厚生がある医療保障制度を提供することなどが含まれる」としている。
英安全衛生庁(HSE)の統計では、金融サービスの職は他の平均的な職と比べ、ストレスに関連した病気にかかる可能性が44%高いことが示されている。故に、同業界の雇い主は欠勤によって財務にもたらされる打撃をコントロールする措置を講じている。
生保大手メットライフによれば、「グループ・インカム・プロテクション(GIP)」として知られる保険商品に対する需要が、金融セクターの雇い主の間で着実に高まっているという。
メットライフ(英国)のトム・ゲイナー氏は、平均的な雇い主は従業員の病欠にかかるコストに備え、年間給与の1─1.5%に相当する額を保険に充てていると話す。
「英国では、約12─13%の企業がGIPに入っており、銀行に絞るとその割合は100%に近い。入っていない投資銀行を私は知らない」
メットライフの中核市場である米国のデータによれば、精神疾患を患う従業員が理由で保険請求をする投資銀行は、他の加入企業よりも最大30%多いという。
危機の人的損失
2013年末までの政府データによると、ロンドンの金融街シティにおける人口10万人当たりの自殺率は2009年以降、同市の他地区を凌駕(りょうが)している。
「問題の一部は、この業界が常に人を削減していることだ」と、30年以上のキャリアで何度か解雇された経験のあるバンカーは指摘。今も求職中の同バンカーは「ロンドンはその先陣でもある。ここではいつも解雇される脅威にさらされている」と、匿名を条件に語った。
微妙な話題であることから、職場のストレスに悩まされる人たちはロイターの取材を受けたがらなかった。つまりこれは、マネジャーや同僚に話すのを恐れ、報告されていない多くのケースがある可能性を意味する。