最新記事

金融

英国のバンカーが陥るストレス地獄

欧州の大手バンク10行は昨年6月以降13万人を解雇した──

2016年2月16日(火)18時03分

2月14日、職の不安定化、仕事量の増加、規制改革、銀行セクターに対する世間の悪いイメージ──。こうしたことが、英国の銀行に勤めるバンカーの心の健康を損なっている。英ロンドン地下鉄のバンク駅で2010年7月撮影(2016年 ロイター/Andrew Winning)

 職の不安定化、仕事量の増加、規制改革、銀行セクターに対する世間の悪いイメージ──。こうしたことが、英国の銀行に勤めるバンカーの心の健康を損なっている。

 世界金融危機から8年を経た今、同業界で高まるストレスが、病気で働けなくなった行員に対するコストを補うための保険需要を押し上げていることが、保険会社のデータによって明らかとなっている。

 「こうした問題は金融危機以降、最悪な水準を更新し続けている」と、ウィリス・タワーズワトソンのジャグデブ・ケンス氏は指摘。「いまだ職にある者は非難されている。大半はスキャンダルとは無縁なのに。高まるプレッシャーの下で、以前よりも長時間働き、複数の仕事をこなしている。何か手を打つべきだ」

かつては一流かつ高給で、生涯のキャリアとして安息の勤め先だった銀行は、当局による規制改革によって急速な文化的、構造的変化を遂げている。

 資本規制の強化、不正への罰金強化、リスクの高い事業の閉鎖により、銀行は人員削減を余儀なくされている。

 ロイターのデータによると、欧州の大手銀10行は昨年6月以降、13万人を解雇している。

 ストレスの影響は銀行業界の上層部にまで達している。ロイズのアントニオ・ホルタオソリオ最高経営責任者(CEO)は2011年、睡眠不足と極度の疲労から2カ月間の休養を取った。

 それから2年後、バークレイズのコンプライアンス責任者だったヘクター・サンツ氏もストレスを理由に休職後に辞めている。

 世界的なリセッション(景気後退)に陥るリスクが高まるにつれ、投資家たちは銀行に一段のスリム化を求めている。労働組合ユナイトが昨年9─12月に実施した調査によると、銀行員の約4人に3人が職場でのストレスを認め、不安発作や不眠症やうつ病の症状が現れているという。

 主にロイズ・バンキング・グループやロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)、HSBCやTSBのリテール部門やバックオフィスで働く、回答者の約85%は、昨年に無報酬の残業を経験したと答えている。

 ロイズ、RBS、TSBは、コメント要請への対応を英国銀行協会(BBA)に委ねた。

 回答者の約3分の2が仕事量が増加していると答え、約5分の1は業績を上げるプレッシャーを感じているとしている。72%が、その結果、辞めることを検討していると回答している。

 「仕事に関わるストレスは非常に深刻で、こうした問題は増えている」と、ユナイトの金融部門担当者、ドミニク・フック氏は指摘。「われわれは現在、長時間労働や長期の人員削減などストレスを引き起こすさまざまな問題に、従業員と共に取り組んでいる」とし、バークレイズの行員を対象とする別の調査も進行中だと語った。

治療より予防

 BBAは従業員の身体的、精神的な健康を守ることが加盟行にとって「最優先事項」だとしている。英国の銀行は問題が起きないようにするため、これまで以上に革新的な方法を考案している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

クレディ・アグリコル、第4四半期は39%減益 一時

ワールド

台湾の追加防衛支出案、通過しなければ国際社会に誤解

ワールド

インド通貨、88.60─89.00ルピーまで上昇へ

ビジネス

UBS、第4四半期純利益56%増で予想上回る 自社
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 4
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 9
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 10
    ICE射殺事件で見えたトランプ政権の「ほころび」――ア…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 10
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中